初めてのキス(DEEP)
オオカミに顔を近づけて口が当たる寸前に目を閉じる。
そして、そのまま顔を前に近づけた事で口に柔らかい感触を得る……あのオオカミの肉厚の唇に自分が口づけているというのを一気に実感して身体の底から熱くなるのを感じる。
この時点で幸福感と満足感は今までの比ではない。
脳みその奥底まで蕩けそうな快楽を感じて全てがどうでも良くなりそうになった……だが、今回のこれは愛を確かめ合う行為では断じて無い。
戦うために必要な力を狼に受け渡す為の行為だ。
何とか気を取り直した私は自分の中にある加護を、口を通してオオカミに送り込む事をイメージする。
そうすると少しずつではあるが、自分の中から力が抜け、オオカミの元に渡っていく感覚がある。
チラッと右目を開けると、オオカミのライダースーツが少しずつ元の状態に戻っていくのが分かった。
ホッと一息ついた……そんな時である。
(イェーイ!お姉さん、聞こえる?)
「!?」
突如として少女の声が脳内に響く。
唇が塞がれていなかったら大声をあげていたかもしれない。
(そんな驚かないでよ。
それよりもお姉さんに伝えたい事があるんだよ)
(な、何なの!?)
(良いニュースと悪いニュースがあるんだけど、どっちから聞きたい?)
(どっちでも良いわよ!)
せっかくの良い雰囲気に水を差された気分になり、心の中とはいえ思わず声を荒げる。
だが、ごく短い付き合いとは言え、この少女がこの程度の事で慌てるような性格では無い事は分かっていた。
(それじゃ、良いニュースから。
接吻による加護の譲渡は舌を入れて絡ませるとより強くなるよ)
(そんな事出来るわけないでしょ!?)
(それは悪いニュース次第じゃないかな?
悪いニュースはねぇ……後1分くらいで結界が壊れちゃいます!
わぁ〜パチパチパチ!!
……ま、そんな訳だから、早く僕にぶちゅ〜とやる所を見せてちょうだいね)
チラリと上の方を見ると、少女は満面の笑みで手を振ってくる。
あの少女の事だ……私にそれをやらせたい為にワザと結界を弱く作ったのだろう。
正直な話、ここまであの少女の手のひらで転がされているようで癪に触る。
だが……他に手が無いのも事実だ。
(ええーい、こうなりゃ自棄だ!)
心の中でそう決意した私は覚悟を決めてオオカミの口の中に自分の舌を捻じ込んだ。
「!!??」
その事に驚いたオオカミが目を見開いて私の方を見る。
私はそんなオオカミの真っ直ぐに見つめながら、オオカミの舌を探す。
口の中なので当然目当ての物はすぐに見つかった。
オオカミの舌に自分の舌を絡ませる……その瞬間であった。
『んんんんんん!?』
私とオオカミは声を揃えて身悶える。
舌と舌が触れた瞬間……私は今までに感じた事がない程の快楽が脳天から爪先まで電流となって走り抜けた。
恥ずかしい話ではあるが、その時の快感によって私は……達してしまっていた。