デバガメ少女、視姦中
本日2話目です。
2022/08/10 誤字報告ありましたが却下させていただきました。
前の話で書いていますが、コンの本名は魂魄です。
日向はコンに対して距離を取るために愛称のコンでは無く、敢えて魂魄とフルネームで呼んで他人行儀に接している……という話なので誤字ではありません。
「へぇ〜じゃあ、僕は高みの見物してるから……あ、これはちょっと借りるよ。
文字通りの見物をさせてもらうから」
少女がそう言った瞬間に私の手から護国のコントロールが離れる。
「一体どうやって!?
それよりも結界が……」
そこまで言って気が付く……周囲ではオオカミもスライムも全ての時間が止まっていることに。
「あはは〜お姉さん、本当に鈍いね。
お姉さん以外の時間を止めてた事に今頃気付いたのかい?
僕とお姉さんの会話に誰も割り込まなくて変に思わなかったのかい?」
言われてみれば、この少女と会話している間に誰も……コンもリルもオオカミも口を挟んでいない。
しかし……停めている時間を更に上書きして停める事など可能なのだろうか?
「ついでに事が済むくらいまでは結界維持してあげるから楽しんでよ。
僕も上からじっくりと見学させてもらうから……あ、その間に僕のこと話したら結界解いちゃうから気をつけてね」
少女はそう宣言した後にコントロールを奪った護国にふわりと飛び乗る。
そして、文字通りに上空からこちらを覗き見ている。
護国の上でうつ伏せになり、頬杖をつく姿はまるで花畑を愛でる少女のようである。
しかし、実際に行っているのはデバガメ行為なのだから性質が悪い。
「私はこのまま突っ込むからキツネは援護を!」
オオカミの声でハッとする。
そうだ……時間が止まっていたタイミングはオオカミが突っ込もうとしている直前だった。
「ま、待って待って……ええっと、リル!
加護を相手に受け渡す方法とか何かあるんでしょ?」
「……そういえば遥か昔の文献に載っていたような気が……はて?
何だったかのう……」
こいつ……肝心な所を覚えてやがらない!!
「ほ、ほら、アレじゃないの?
物語の鉄板だとキスとか」
「ふむ……そうであった。
確か接吻によって力の受け渡しをしたという事例があった筈だ」
「凄いコン!
日向、よく気がついたコン」
「一応聞いておくけどコンは……」
「全くもって初耳だコン」
「魂魄さんはそうですよねぇ。
最初から期待してないので大丈夫ですよ」
「ひ、日向が冷たいコン」
「えっと……つまり、私とキツネがキスすると、私の加護が回復するって事?」
一連の流れを把握したオオカミが話をまとめて聞いてくる。
「そういう事みたいね。
この状況じゃ揉めてる暇はないでしょ?」
「それはそうなんだけど……キツネはそれでいいの?」
「……良いか悪いかで言えば良くないよ。
でもね、もし……仮にだけど……こんな状況じゃ仕方ないって言って私以外の人とする事になったらもっと嫌。
加護が途中で切れてオオカミが力尽きるのはもっと嫌。
だから……私は今!オオカミとキスがしたい!!」
私が半ば自棄になってそう宣言するとオオカミは困ったような、少し嬉しそうな笑顔を見せた。
「そこまで情熱的に言われたら仕方ないか……いいよ、キス……しよう。
キツネが言い出したんだからリードしてよね」
オオカミはそう言って、その場で屈んで目を閉じる。
私は意を決して自分の顔をオオカミに近づけていくのであった。
こういう時に外野は何て言うか知ってますか?
「キース!キース!」
と騒ぐのが様式美ですね。