オオカミと真守
「遅いよ、オオカミ」
「ごめんなさいね……少々手間取る事があったのよ」
「まぁ、オオカミが来てくれたなら安心ね。
背中は任せていいよね?」
「もちろんよ。
サッサと倒してしまいましょう」
そう言ってオオカミは手に装着したグローブを振るう。
すると、グローブから3対の爪が出現した。
彼女の戦闘スタイルはその爪を使った格闘術だ。
オオカミは私と同じ時期にこうした戦いに身を投じるようになったらしく、夏休みの間に共に戦い続けた結果、大きな信頼関係を築く事になった。
その相棒であるオオカミが駆けつけてくれてからは一方的なものである。
多数いた不浄はすっかりと浄化され、私が最後の一体を斬りつけた事で戦いは終わりを告げた。
「今日も助けられちゃったね……ありがと」
「気にしなくて良いわ……キツネには私も助けられているから。
ところで一つ聞きたいんだけど」
「なに?」
いつもなら戦いが終わるとすぐに帰ってしまうオオカミが珍しく話しかけてくる。
私は興味深げに耳を傾けたのだが……
「あなた……日向でしょ?」
「え……何で……」
私達は互いに自己紹介などしていない。
ただ、顔につけている面からお互いにオオカミ、キツネと呼び合っていた。
驚きのあまり固まってしまった私の様子を見てオオカミはため息をつく。
「やっぱりね……何で分かったかって言われたら……」
オオカミはそう言いながら顔につけたマスクを脱ぐ。
マスクの中から現れた金色の長い髪を靡かせたオオカミ。
それは私が先程見た、外見は見慣れないが中身はよく知る人物。
「私が真守だからよ」
そう……何故か自分と同じように女性になっていた大山真守がそこにいた。
「何で私だって分かったの?
最初から知ってたの?」
私の疑問にオオカミ……真守は首を振る。
「気付いたのはついさっき。
というか、女性になった姿を見た上で目の前で飛び降りて変身するところなんて見たら誰でも気付くわよ。
私と違ってお面しか付けてないし」
「あっ……そっか……」
私は真守が他の人達と同じように止まっているものだと思っていた。
しかし、私と同じであるならばあの瞬間も真守はしっかり動いていて私の動きを全部見ていたことになる」
「うわっ、はず……」
思い出すと恥ずかしさが込み上げて顔が赤らむ。
「まぁ、そう気にしないの。
話したいことは沢山あるけど……もうそろそろ時間切れみたいね。
とりあえず戻りましょう」
「うん、行こっか」
不浄を浄化しきって暫く立つと時間の流れが戻ってしまう。
その為に真守に促され、来た時と同じゲートを潜って元の場所……学校へと戻っていった。
夏休みの間はゲートを潜ると違う場所に戻っていたようなのだが、今回は真守もちゃんと隣にいた。
「やっぱり真守なんだね」
「そっちこそ日向なんだな」
変身が解けた姿を見た私達はお互いの姿を見てため息をつく。
これはお互いが予想と違う夏休みデビューしてしまった私……日向と真守のちょっと変わった日常物語である。
ここまでがあらすじの部分となるので、次回はメイン2人の人物紹介を挟みます。