とある弟の苦悩 1
「ただいま〜」
「おかえり」
「なんだ、姉ちゃんが先にかえ……」
「どうしたの?
急に顔を背けて」
「な、何でもねぇよ!」
俺は姉ちゃんの方を見ずに階段を駆け上がって自室へと向かった。
「くそ……今まで気にしてなかったのに、何でこんな急に気になるんだよ。
姉ちゃんも姉ちゃんで無防備すぎるんだよ」
姉は先程、リビングにあるソファーに制服のままで寝っ転がっていた。
入り口から背を向ける格好であり、無防備な姉は足をパタパタさせたながらスマホを弄っていた訳だが……当然ながら、そんな格好をしていると嫌でも見えてしまうものがある。
正直、実の姉の下着が見えたくらいでこんなに動揺するものではないと分かっているのだが……最近気が付いてしまったのだ。
俺の姉ちゃんはそこらのアイドルが束になっても敵わない逸材だということに。
この事に気付いてからというものの、好きだったアイドルを見ても何も感じず、友人からお勧めのグラビアアイドルの写真を見せられても、俺の姉ちゃんの方が可愛いし……という気持ちになってしまう。
何ならおっぱいも尻も姉の方が凄い。
そんな人物が身近にいるのに、本やスマホに写っているアイドル達に何も感じなくなってしまうのは仕方のない事だろう。
「ああ〜夏休みに入るまでは全然平気だったはずなのに、何でこんなに意識するようになっちまったんだよ!」
俺は頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
これが血の繋がっていない相手ならまだ良いのかもしれないが、正真正銘、間違いなく実の姉だ。
そんな人物に劣情を抱いてしまうなんて絶対に不味い。
どうすれば良いか考えていた時に、唯一相談出来そうな相手を思い出す。
姉ちゃんの親友で俺が最も尊敬して師匠と呼ぶ人物。
師匠なら俺の力になってくれるかもしれない。
そう思い付いたら即決行!
急いで着替えると俺は師匠の家へと向かう。
師匠の家は古武術の道場をやっており、今の時間は稽古を行っているはず。
俺も昔からお世話になっているので、相談ついでに汗を流してサッパリと気持ちを切り替えようと考えたのだった。
「失礼します!」
「ん?ああ、弟君か。
稽古をつけに来たのか?」
「はい!
ついでに相談したいことがあったのですが良いでしょうか?」
「勿論だ。
今日は私がみっちり稽古をつけてやろう」
そう言って師匠が笑って奥の部屋を指さした。
俺は道着を手に、久しぶりに稽古をつけてもらえるとワクワクしながら師匠の前に向かった。