美幸のカウンセリング 2
全4話の2です。
「先ずは……私も本職では無いので難しいですが。
真守ちゃんに変身するところを見られた事がきっかけで、彼女を置いて先に出ていったと言ってましたね。
その時はどんな気持ちでしたか?」
「どんなって……恥ずかしいって気持ちばかりだった。
後は私ばっかそういうの見られるのはズルいとかかな?」
美幸さんの問いに、その時のことを思い出しながら答える。
「それでは真守ちゃんのことを嫌いだとか、嫌だと言う気持ちは無かったという事ですか?」
「それは……うーん……無いと思う」
「分かりました」
私の言葉に美幸さんは満足そうに頷く。
「今ので何か分かったの?」
「少しですけどね。
では、質問を続けていきましょう。
犬型の不浄にお尻を嗅がれたり、舐められたりした時はどんな気分でした?」
「ひたすらに嫌悪感が凄かった。
後はやっぱり恥ずかしくて恥ずかしくて……穴があったら入りたいって、ああいう時に使うんだろうね。
後は……男の時だったら多分こんな事をされてもここまで慌てなかったんじゃって思った。
それが私を余計に困惑させた気がする」
その時のことを思い出して、嫌悪感に鳥肌を浮かばせながら何とか答える。
「その辺りが男性から女性に変わった弊害が出ているのかもしれませんね。
心身のズレがあるというか……もう一つ。
答えにくいかもしれませんが、その行為に気持ちいいとかプラスの感情はありましたか?」
「ぜんっぜん!
ひたすらにキモくて嫌悪感しか無かったよ」
美幸さんの言葉に思わず顔を顰める。
これに関しては思い出さなくてもハッキリと答えることが出来た。
「変なことを聞いてしまってすいません。
ですが、問題が掴めてきた気がしますね」
「そうなの?
私には分からないけど」
「もう少し続けましょうね。
その後に真守ちゃんに助けられた時はどうでしたか?」
「あの時は穢れに侵されてマトモじゃ無かったけど……真守の姿を見たら安心したかな。
それと同時に穢された部分が熱くなっちゃって……目の前にいる真守に触って欲しくて我慢出来なくなってたよ」
「それは目の前に真守ちゃんがいたからそう思ったんですかね?
例えば私だったらどうでしょうか?」
私は目を閉じてその場面を想像する。
「あの時は……理性なんて吹き飛んでいたから美幸さんでも助けを求めてたと思う。
……でも」
その時にふと浮かんだ考えを口にしようとして躊躇う。
その続きの言葉は、美幸さんにはとても失礼な言葉に思えたから。
「でも……何ですか?
隠さずに話してほしいです」
だけど、そうやって真剣な表情で私のワガママに付き合ってもらっている美幸さんの顔を見ていると、黙っている方が悪い気がした。
「2人が並んでいたら真守の方に助けを求めていたと思う。
……失礼なこと言ってごめんなさい」
私がそう言って謝罪するが、美幸さんは聖母のような表情を浮かべて私の手を取った。
「お二人の付き合いの長さなら当たり前じゃ無いですか。
寧ろ、2人の絆の強さを見られて私は嬉しいですよ。
ですから、謝罪は必要ありませんし、気にしなくて大丈夫です」
そう言って微笑む美幸さんを見だ時に思った……私もこんな風に誰かの心に寄り添えるような人間になりたいと。
思えばこの時に、九重美幸という人物に憧れたのだろう。
趣味の問題はあるものの、店長をやっていてバイトリーダーをはじめとして従業員からは慕われている美幸さん。
その理由が理解してもらえる回になったのではと思います。
因みにお気付きの方もいらっしゃるでしょうが、最後の質問は趣味8割です。