不浄と狐の嫁入り
2022/08/22 誤字報告受け付けました。
いつもありがとうございます。
夏休み……まだ男だった頃の俺は父の田舎に行く事になった。
父の故郷は山の中にある正に田舎と呼ぶに相応しい場所だった。
そこで俺は狐の精霊コンと出会った。
コンはとても困っており、コンの願いを聞き届けた俺は今の姿……銀髪の美少女になっていた。
更に産まれた時から女性だったと言う現実改変が行われた事で、自分が元男だと知っているのは私だけ……の筈であった。
だが……
「お、お前は何で女に……」
「真守こそ何で女に……」
そこまで言ってハッと気付いた。
真守は男だった頃の私の記憶を持っていると。
(コン、どう言う事だ!)
(そんな事より大変コン!
吹き溜まりが溢れてきたコン!)
(こんな時にかよ……っくそ)
「真守、その話は後だ」
「あ、おい!?」
私はそう言って窓に向かって駆け出す。
この教室は3階にあり、本来ならば周りが止めそうなものだが何の反応もない。
それもその筈で、周りの皆はビデオの停止ボタンを押したように静止していた。
後ろにいて見えないが、真守もきっと止まっている事だろう。
「無垢なる姿で……いま、嫁入りを願います」
窓から飛び出した瞬間に私がそう呟くと、晴れ渡っているにも関わらず、雨が降り注ぐ。
私が地面に降り立った頃には雨は上がり、私の衣装は制服から白無垢へと変わる。
但し、その白無垢は足やお腹が丸出しでかなり露出が高いデザインになっているのだが……更に腰に一振りの刀。
頭の上には狐のケモミミ、横には狐を象ったお面が現れる。
私は自分の姿を確認する……それと同時に浮かぶのは先程の真守の姿であった。
真守は長い金髪を靡かせたスタイル抜群の美女になっていた。
(何でこんなことになったのか、後でたっぷり聞き出さないと)
そんなことを考えていると目の前に別の空間に繋がるゲートが現れた。
そのゲートを通った先は見知らぬ商店街だった。
明らかに異常なのは、黒いモヤのようなものが人の形を保っていた事だった。
「こんなにも不浄が現れるなんて……厄介なものね」
「ひなた、気をつけて戦うコン」
腰に佩いた刀からコンの声がする。
この刀はコンが変化したもので名を銘刀・魂魄。
不浄と呼ばれる人型のモヤを浄化する力を持つ刀だ。
「穢れた嫁入りへの道、浄化させて頂きます」
私は顔の横にある狐面を被り、刀を持って近くにいた不浄を斬りつける。
斬撃の後から輝く光が漏れ出して不浄は溶けるように消えていく。
これで一体は浄化できた……のだが、これで私の存在に気付いた不浄達が一斉に私の元へと駆け出した。
不浄は手の部分を刃物のような形に変えて私に斬りかかって来る。
その攻撃を捌きながら反撃しようとするが、不浄の数が多すぎて糸口が掴めない。
「ひなた、尻尾を使うコン」
「ああ、そう言えばそうだった。
普段無いから忘れちゃうのよね」
不浄の攻撃を刀で捌き、その身を捻って回避する。
そうして頭を下げて回転しながら回避した時に、変身時に生えてきた尻尾を不浄の足に絡ませて転倒させる。
これらを幾度か繰り返して不浄の手数を減らしつつ、向かってくるものを斬り伏せて浄化する。
後はこれらを繰り返すだけなのだが……
「数が多すぎるよおおおお!!」
不浄の多さに思わず泣き言が口から飛び出す。
こんな泣き言を言ってしまったからだろう。
尻尾の足払いをスカしてしまい、不浄に攻撃のチャンスを与えてしまう。
「あ、しまっ……」
不浄に斬りつけられる……そう覚悟した瞬間に、私を斬りつけようとした不浄が横っ飛びに吹き飛んでいく。
「やれやれ、全く見てられないな」
頭上から声が聞こえる。
顔を上げると、そこには狼のマスクを被り、スタイル抜群のプロポーションを惜しげもなく晒すように、ぴっちりとしたライダースーツに身を包む女性がいた。