日向は混乱中
ギリギリまで柱の影で粘っていたのだが、結局時間切れが迫っていると言う事で渋々ゲートから学校へと戻ってきた。
「日向……ごめんな」
変身が解けた瞬間に真守が謝ってきた。
真守は何も悪く無いよ……悪いのは一人で調子に乗って先走った私だから。
心の中に浮かんできた言葉を口に出そうと顔を上げる。
「あ……あの……」
しかし、真守の顔を見た途端に先程の行為が頭の中を駆け巡り顔が赤くなる。
「わ……私こそごめん!」
必死になって絞り出した言葉は心に浮かんだ事とは全く違うこと。
そして私は逃げるように自分の席に座って突っ伏した。
(ああ、もう……私の馬鹿!
何でこんなに思った事が言えないの……)
男の頃にはこんな事は無かった。
何でも言えて、何も遠慮しなくて……でも今日の行為に関係なく真守を見るとドキドキしてしまう。
綺麗だなって……可愛いなって……そう言った気持ちが湧いてきてどんどんと強くなっていく。
「こんな筈じゃなかったのにな……」
授業中も机に顔を突っ伏した状態で呟く。
運良く、この時間帯の先生は必要なことを淡々と書いていくだけなので何のお咎めもない。
私はチラッと隣の席に座る真守を見た。
真守は真面目に黒板の内容を書き写している。
だが、私の視線に気付くとペンを置き、ニコリと笑いながら軽く手を振ってきた。
その仕草が可愛くて、その行為が自分に向けられたものだと言う事が嬉しくて……私は顔を真っ赤にしながら頭を反転させた。
ダメだ……自分の気持ちに整理がつかない。
こんな時に頼れる人は誰かいないだろうか……そう考えた時に真っ先に浮かんだのは美幸さんだった。
あの大人の女性の余裕を学びたい!
そう考えた私は机の下でスマホをポチポチ打ち美幸さんに相談を持ちかけた。
美幸から直ぐに連絡があり、時間を作るから学校が終わったら教えて欲しいと了承するメールを貰った。
よし!心の中でガッツポーズを取る。
結局、この日の授業は一切頭に入って来なかったが何の問題もない。
「あ、日向」
「ごめん、今日は先に行くね」
声をかけてきた真守のに謝りつつ、鞄を持って急いで教室を飛び出す。
学校を飛び出し真っ直ぐにスイート・ヘヴンへと向かう。
その最中にスマホで今から向かう旨を伝える事も忘れない。
こうして、週末のバイト前に再びこの場所を訪れたのであった。