未来からの贈り物
「真守!?
海外に行ってた筈なのに……いつ帰ってきたの?」
私がそう尋ねると、真守は気まずそうに顔を背ける。
その横ではコンが呆れたようにため息をついていた。
「やっぱり日向は気付いていなかったコンね」
「どういうこと?」
コンの言葉に疑問の声をあげると、疋様が真守の肩に手を置きながら答えてくれる。
「狼の力は空間を操りゲートを作り出す。
元里長である私がその力を使えないわけが無いだろう……つまり、いつでも戻れたし、日向に会いに行くことは出来たんだよ、こいつは」
そう言いながら真守の頭をコツンと叩く。
「え……は、はぁ!?
じゃあ、あの時のお別れは何だったのよ!
それに何でそんな事一言も言ってくれないの!?」
「いやいやいや……俺も向こうに行ってから気付いたんだって。
でも、大見得きって出発したのにすぐに帰ってくるのも違う気がするし」
「と、グダグダ言うから、日向の誕生日に合わせて強引に連れてきたというわけだ」
「……真守はそんなに私に会いたくなかったの?
私はずっと会いたくて寂しかったよ」
「そ、そんなわけないだろ!
俺だって会いたかったし寂しかったさ。
……ああ、もう!!
俺が悪かったよ……これからは定期的に戻ってくるし日向に会いに来るから」
「良かった……嬉しい」
私は思わず真守の胸の中に駆け出すと、真守は慌てながらも私を抱き止めてくれた。
その瞬間に周りからは一斉に拍手とお祝いの言葉が浴びせされる。
「仲直りした所でお二人には仕上げをお願いしますね。
はい、これで」
美幸さんはそう言いながら笑顔で大きなナイフを渡してきた。
「これって……」
「ええ、お二人でサクッとやっちゃってください」
「いや、これって2人初めての共同作業ってやつなんじゃ……」
「真守は私とじゃ嫌なの?」
躊躇う真守に首を傾げて覗き込むように顔を見ながら尋ねる。
「……ああ、分かったよ!
嫌じゃないからやればいいんだろ!?」
顔を真っ赤にしながらも私と共にナイフを持ち、そしてケーキに向かってゆっくりと振り下ろす。
ナイフがケーキに触れたとき、様々なビジョンが見えた気がした。
真守と共に結婚式を挙げている姿。
どうやったかは分からないが、2人で子供を抱えて幸せそうにしている姿。
そして、その子供が変身して不浄と……
「真守……私分かっちゃった」
「何のことだ?」
「私が今着ている黒百合。
それに戯が着ている白薔薇。
全部の力を使い果たした私達に、どうしてこの力が与えられたのか。
……これはきっと、これから先でずっと続く私達の子孫達から送られてきた結婚祝いだったんだよ」
「……そうか。
それはいつか産まれてくる子供達に感謝しないといけないな」
「うん……その為にも絶対に私の事を手放しちゃダメだよ?」
その問いに真守は言葉では答えなかった。
代わりにゆっくりと彼女の顔が近づいてくる。
口に柔らかい感触が伝わってくると同時に、周囲から大歓声と拍手が巻き起こった。
……この先も様々な困難が私達に降りかかってくるかもしれない。
でも、この頼れる仲間達と愛するパートナーがいる限り、どんな困難も突破できると信じている。
だって、私たちはこんなにも幸福な場所に居られるのだから。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
当初の予定とはかなり変わりましたが、最後は大団円のハッピーエンドを迎えられて本当に良かったと思います。
この話はここで終わりですが、私の連載の柱である「勇者と魔王の配信稼業」は変わらず毎日更新していますので、この作品で初めて知ったという方は良ければそちらの方にも遊びに来て頂けると嬉しいです。
繰り返しになりますが、最後まで読んで応援していただき本当にありがとうございました。