都会にて1人
2022/11/06 誤字報告受け付けました。
いつもありがとうございます。
無事に高校を卒業した私は上京して調理の専門学校へと進学した。
真守も疋様と一緒に目的の無い旅へと向かっていった。
長い別れにはなるけれど、お互いに納得した上での行動である……寂しさはそこまで感じなかった。
一方で巫女の仕事であるが、こちらは殆ど何もやっていない。
戯の事件から不浄が関わる事件は激減しており、不浄が現れても私の後を継いだ巫女……コンが退治してくれるので、私はほぼ巫女の仕事から解放されていた。
一人暮らしを始めたマンションの一室へと帰ってくる。
手にはスーパーで買い物をした食材が入っており、自炊の大変さとお金の管理の苦労を味わっており、お母さんには頭が上がらないと実感してしまう。
買ってきた食材を冷蔵庫に詰めた時、ふと近くの壁に視線を向ける。
そこには幾つかの写真が飾ってあったのだが、スイヘブで2人で撮ったものが目に付いた。
「真守……」
真守が修行に出ていた数ヶ月の間は全然平気だった。
だから今度も大丈夫だと思っていたのだが……」
「寂しいよ……」
写真の中の真守に向かってポツリと呟いた。
あの頃は家族がいて、セッちゃんがいて、コンやリルがいて……だから大丈夫だったんだと思う。
でも、そんな色んな繋がりを置いて私は一人で上京した。
馴染めていない訳では無い。
こちらの方でも仲の良い友達は出来ている。
それでもあの頃の関係には遠く及ばない……それが私の中の寂しさを大きくしていたのだと思う。
どれだけ写真を見つめていたのだろうか……学校の課題や今日の食事の用意。
やらなければいけない事が沢山あることを思い出して写真から目を離した……その時であった。
周囲の時間が止まる……不浄が現れた時の反応だ。
きっとコンが頑張って退治するのだろうと思った……だが、唐突に私の元に見慣れた生き物がやってきた。
「日向、急で済まないが手を貸してくれ!
緊急事態なんだ!!」
それはかつて真守のパートナーとして活躍し、私とも交流の深かったリルであった。
疋様と真守が旅に出てからは次代の里長として訓練に勤しみつつ、今度はコンのパートナーとしてゲートを繋ぐ役割を担っていた筈である。
「そんなに慌ててどうしたの?
今の不浄ならコンで相手できるでしょ?
戯もいるだろうし……」
そう、狼の巫女が居なくなった代わりとなったのは戯であった。
とは言え、戯の力は強すぎるので、コンのお目付役と言った役割が強いのだが。
そんな2人がいて私が呼び出される理由が思い浮かばない。
「説明は後だ。
とにかく大変だから来てくれ!!」




