卒業したなら
戯との最後の戦いに赴く直前……私たちは互いに終わったらはなしたいことがあると言った。
落ち着くまではと先延ばしにしていたのだが、もうそろそろ大丈夫と判断したのだろう。
それはもちろん私の方も同様だった。
「えーっと……アレだな。
結論から話すと、高校を卒業した後は世界を旅して回ろうと思うんだ」
「急にどういう心境?」
「疋がな……最初の世界では滅びた後の世界しか知らなかったらしいんだ。
こっちに来て狼の里の長になってからは篭りっぱなしで何百年も過ごして。
それで俺も世界を見たこと無いから見てみたいなって。
引き継ぎやら何やらで時間がかかるらしいから、それなら俺の卒業後に行くかって話になってる」
「ふーん、そうなんだ」
私は自分にしてはかなり素っ気ない返事を返していたと思う。
これは急にこんな事を言われて動揺したからではない。
この先に続く真守の言葉が予想出来たとことと、それに対する返答が既に決まっていたからだ。
「……日向も一緒に来るか?」
やっぱり……心の中で呟く。
絶対にそう聞いてくれるだろうという確信があった。
そして、真守の顔を見る限り私の答えも同じように確信して言っているのだろう。
私の答えは決まっている。
迷うことなど何もない。
「行かないよ」
真守と一緒に居たくて性転換して変身ヒロインにまでなった私の答えは……ノーであった。
「はは、そうだと思った。
でも、聞かないで行ったら怒ってただろうしな」
「それは間違いない。
女心の複雑さを理解してきたんじゃない?」
「俺が分かるのは日向の考えてる事ぐらいさ。
それで、俺の誘いを断った日向は何をするんだ?」
「う〜ん、高校を卒業したらお菓子作りの勉強しようかなって。
それで自分のお店を出してみたいって思ったんだよね。
その為に一回この街を出てみるつもりだよ」
真守に言われて急に考えた事ではなく、元からしっかりと考えていた話である。
そもそも、この話が私が真守にしたかった話だったのだから。
「それじゃ、高校を卒業したら暫くはお別れだな」
「長い人生の数年程度は何てことないでしょ?
一生会わないつもりじゃないんだし」
「はは、そりゃそうだ」
こうして私達は将来の話をしながら学校へと向かうのだった。
そして、月日は流れて……
明日3話まとめ上げして最終回の予定です。