いつもの朝の風景
「あんた達、いい加減に起きなさい!!」
お母さんの叫び声でベッドから飛び起きる。
身支度を整えて居間に向かうと、同じように飛び起きたらしい日和がボサボサの寝起き状態で朝食を食べていた。
「おはよう」
「はい、おはよう……全く、最近あんた達弛んでるんじゃないの?」
「あはは……いただきます」
そうして朝食を食べていると、居間に近づいてくる足音がする。
その足音の人物は、扉を少し開けて恐る恐るといった様子で中に入ってきた。
「お……おはよう……」
「はい、おはよう。
あんたもさっさと食べて支度しなさい、戯」
「は、はい……いただきます」
そう、この借りてきた猫のように大人しくしているのは、信じられない話だが戯である。
私が助け出した事で彼女はこの世界で生きていくことを決めた。
その意思は修正力となって表れた結果、何故か私の妹になってしまっていたのだ。
それならば仕方ないと家に連れ帰ってきたわけだが……戯はお母さんに会うなり今の態度になってしまった。
お母さんも日和も当たり前のように戯を受け入れていたのだが、当の本人としては長いこと家出した挙句、やれる限りの悪い事をした後に改心して戻ってきた……という状況である。
まともにお母さんの顔を見ることすら難しいので、この先の家庭生活は難儀しそうだ。
最も……
「んん〜美味しい。
今日のご飯も最高に美味しいよ……か、母さん」
「いつもと大して変わりないだろうに……それでもあんたはちゃんと味の感想伝えてくれて良い子だね」
そう言ってお母さんの手料理を堪能する戯を見る限り、時間はかかってもきっとこの家の子供に戻ることが出来るだろうと確信していた。
私と戯は既に支度を終えていたのでのんびりしていたのだが、日和はまだだったのでバタバタと慌ただしい。
「それじゃ、もうそろそろ行こうかな」
「あ、お姉ちゃんが行くなら僕も行くよ」
「待った待った!
用意終わったから俺も行くって」
「3人とも気をつけて行くのよ」
『行ってきまーす!!』
日和と戯が通う小学校は途中まで一緒であり、最近は3人で並んで登校するのがいつもの朝の光景となっていた。
世界が戯を受け入れた事で、戯も見た目通りの小学生となっていた。
だが、その見た目のせいで日和よりも下の学年となり、姉から妹に立場が変化したのは中々に良い罰だと思う。
「ひーちゃん、おっはよ〜!」
投稿の途中に元気よく声をかけられる。
其方を向かなくても、私の事をこう呼ぶのは1人だけなので誰かは直ぐに分かる。
「おはよう、セッちゃん」
「ひよ君にそうちゃんもおはよう」
セッちゃんはそう言うと2人の間に入って手を繋ぐ。
これも毎日、お馴染みの光景になっていた。
しばらく進むと小学校への道が分かれるので、ここで2人を見送ってから私達も高校へと向かう。
その途中で見覚えのある金髪の女性が立ち止まって待っていた。
「あれ?今日はこんな所でどうしたの?」
「ああ……ちょっとな……」
何かを悩んでいるような真守。
「……あ、そうだった。
今日やる事があったから先に行くね〜ひーちやん達はごゆっくり」
その雰囲気を感じとったのだろう。
セッちゃんが走って学校に向かっていった。
「……良い友達だな」
「私にはもったいないくらいにね。
それで、どうかしたの?」
「……最後の戦いに行く前に言ってた話したい事についてだ」