オオカミ、初めての手当て
せっかくの良い雰囲気なので2話連続投稿します。
こちらは1話目です。
虚な瞳で私を見つめながら熱くなった足をどうにかして欲しいと懇願するキツネ。
そんな今までにない姿にどうしたら良いか分からずに困惑していると精霊が状況の説明を始めた。
「どうやら不浄の穢れを浴びすぎたらしいな。
お主が手当てするしか無かろう」
「手当てって何をすればいいの?」
「その名の通りだよ……患部、恐らくだか今回は足の部分に手を当ててさすってやるのだ。
そうすれば巫女の浄化能力で穢れが祓われるだろう」
「はぁ!?ちょっ……ちょっと待ってよ」
「早くせねば全身に穢れが回るぞ。
そうなっては手遅れになる」
「ねぇ……おおかみぃ。
はやく……はやくちょうだい」
「く……くそ、やるしかないか」
私は覚悟を決めてキツネの前にしゃがみ込んで右手を前に出す。
何一つ隠すこともなく無防備に曝け出されたキツネの太ももを見ていると、汗と動悸が止まらなくなる。
(これは治療の為、これは治療の為)
私は心の中でそう言い聞かせながらキツネの左太ももに手を置いた。
柔らかく、弾力性のある肌が手にぴたりと吸い付いてくる。
あまりの触りこごちの良さに気分が動転しそうになるが、深呼吸を入れて気持ちを落ち着かせてさすりだす。
「あ……いい。
とっても気持ちいいよ」
そんな私の気持ちも知らずにトロンとした瞳で私を見つめながら甘い声を出すキツネ。
気が付けば次第に身体の力を抜いて倒れていき、キツネは私の身体に抱きついてきた。
「おおかみぃ〜とっても気持ちいいの。
でも、まだ足りないの」
耳元でそう囁くキツネ。
そうして近付かれるとキツネから甘く良い匂いが漂ってきて、視覚、触覚、嗅覚、聴覚の4点から私の理性を奪い取ろうとしてきていた。
「ね……お願い……もっと上の方……内側の方を触って」
「え、な、う、内側!?」
今でもかなり際どい部分、付け根に到達しそうな部分をさすっている……これが更に内側で上の方となると……私は自分でも意識せずにゴクリと生唾を飲みこむ。
思わずキツネが指し示す方を見ると、普段はパレオのような作りになって隠れている部分が露わになっていた。
水着のような服装なので白いビキニパンツと変わらないはずなのだが、今の状況でその部分はそんな生易しい言葉では表せない妖艶さを放っている。
(これは手当て……これは治療……)
導かれるままに私がその部分に手を差し込もうとした……その時であった。
見つめあっていたキツネの瞳に正気の色が灯る。
「あ……あ……ああああああ!!」
瞬間湯沸かし器のように一瞬で顔を真っ赤にしたキツネはバッと後方に飛び去っていく。
それと同時に狐面で顔を隠しつつ柱の影にかくれてしまったのであった。
お腹が痛い時などに手を当てる事で症状が緩和する事もある事から手当てと言う言葉が生まれたそうな。
そこから治療することを手当てと言われるようになったそうです。
なので、これは健全な医療行為なのです。