日向ってどんな人?
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……ウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダ……」
戯がブツブツと呟く度に、彼女の身体から黒い靄が生まれて広がっていく。
そして、それは戯を包み込んで隠し、黒い球体として空中へと浮かび上がった……が、それ以上何か動く様子は無い。
「そう……結局はそういう事だったのね……」
「日向、どういう事だコン?」
「今まで自分の意思で好き勝手にやってきた……そう言ってたけど、不浄に冒されたままだったんだよ、戯は。
自分勝手に、自由気ままに振る舞っているようでも、それは不浄によって自制心を全て消されたからに過ぎなかったんだよ。
自分ではその事に気付かずに、それが自分の意思だと勘違いしたまま長い事生き続けたんだね」
「そんな……そんなの可哀想だコン。
あれだって日向なんだコン?
なら助けなきゃダメだコン!」
「ありがとう……コンは本当に優しくて最高に相棒だね」
そうしてコンの頭を撫でていると、向こうの方から二つの影がこちらにやってくるのが見えた。
それは戦いの決着を付けにいったはずの真守と疋様であった。
「あれ?勝負はどうしたの?」
「こっちの様子がおかしいから中止してやってきたんだよ」
そういう真守の横で疋様が肩をすくめる。
「何を言ってるんだか……終わらせようと思えば、いつでも終わらせられる勝負をダラダラ続けて。
挙句にあっちの様子がおかしいから見にいくぞなどと……」
「でも、来て良かっただろ?
戯の……お前の日向の真実が見れてさ」
「……そうだな。
私は結局彼女の真意が何も見えていなかったんだな」
「結局、お前は日向を信じる心が足りないんだって。
普通の状態なら責めてきたり従属させようとする事はあっても、捨てるなんてする訳ないだろ」
「確かにその通りだな」
「いや、ちょっと待ってよ!」
真守のあまりにも酷い言い草に口を挟んでしまう。
「みんなの中で私ってどうなってるの?」
「ドSコン」
「女王様」
「独占欲の塊」
「くっ……心当たりがあるせいで反論が出来ない!」
今までにやらかした数々の不祥事を思い起こせば、3人の言い分は全く否定できない話であった。
「まぁ、それはそれとして……ここからどうするんだ?」
表情を真剣なものに戻した真守が尋ねる。
見渡せばコンも疋様も同じように真剣な表情でこちらを見つめていた。
「決まってるでしょ……あのバカを助けにいく。
それで全員で生きて帰ってハッピーエンドよ。
もちろん、そのあとはキツくお仕置きしてあげるけどね」
「……そう言うと思った。
俺の力も全部持っていけよ」
真守のチョーカーを通して彼女の力が流れ込んでくるのを感じる。
「日向とは回路を通して繋がっているコン。
だから、常に力を送り続けるコン」
コンから狐の加護が流れ続けているのが分かる。
恐らく彼女の力は癒しの力なのだろう。
自分の状態が常に最適化されているのを感じた。
「私には日向に渡せるような力は何も残っていない……ただ、救って欲しいと願う気持ちだけでも持っていってはもらえないか?」
疋様の願いが私の中に染み込んでいくのを感じる……何としても戯を救うのだと言う気持ちが湧いてきた。
他にも、私と繋がったあらゆる人達の心が、想いが、私の力へと変わっていく。
「必ず取り戻してくるよ……私はドSで女王様で……独占欲の塊だから。
このまま不浄に呑み込まれて終わりになんて絶対にさせない」