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「まぁ、そんなに絶望することはないよ。

今まで出会ったお姉さん達は頑張っても三尾程度だから。

そんな尾をどれだけ捧げたってほんの少し強くなる程度さ。

でも……」


「くっ……」


斬りかかってきた戯の一撃をギリギリで受け止める。


だが、その瞬間にお腹に強い衝撃を喰らって吹き飛ばされてしまった。


「お姉さんには、そのほんの少しの差で勝てちゃいそうだね」


「くぅ……まだ、まだ負けたりはしない!」


(ひーちゃん!)


(姉ちゃん)


セッちゃんが、日和が……美幸さんに真由美さん達の祈りが身体に流れていく。


いや……それだけじゃない。


(里の者よ、祈りを捧げるのじゃ)


(巫女殿、魂魄……無事でいてくだされ)


銀さまや紅蓮さんを始めとした狐の里の人々の祈りも届く。


「へぇ……そこからまた力を上げるんだ。

本当にお姉さんは楽しませてくれるなぁ」


「負けられない……貴女が捨てたものがどれだけの力を持っているか分からせるまでは……負けられないのよ!!」


こうして仲間達の力も借りた私は戯に向かっていく。


二つの剣戟が交差する場所はお互いの中間点。


再び拮抗する戦いに戻した状態でお互いの攻撃を打ちつけ合う。


それは先程の戦いと変わらない……剣戟が中心で交差し、牽制弾がぶつかり合い、必殺技の発動を潰し合う。


無限とも思えるような長い時間の中で……少しずつ、少しずつ差が開き始める。


その差は徐々に広がっていく……気付いた時には取り戻すことが出来ない程に。


その広がった差によって遂には決定的な一撃が決まる……最後に立っていたのは……


「本当にお姉さんは強かったよ。

人を捨ててから、ここまで追い詰められたのは初めてだった。

……物語が終わるのがこんなに寂しいと感じたのはいつ以来だろう。

惜しいね……本当に寂しくて切ない」


「…………」


もはや声を出すことすらままならない。


何とか顔だけを動かして戯の方を見ると、彼女は本当に寂しくて辛そうな表情をしていた。


それは私が初めて見た戯の本当の表情だったのかもしれない。


「でも、物語を始めたからには終わらせる義務がある。

さようなら、この世界の僕」


戯は悲しそうな表情のままで、手に構えた刀を振り下ろす。


(みんな……真守……ごめん……)


死を悟った私は目を閉じ、心の中で謝りながらその時が来るのを待った。

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