黒薔薇の真実
私達は互角の戦いを続けていた。
互いの刀を打ち付け合い、牽制に放った狐火は、全く同じタイミング撃ち出されて相殺される。
幻術や瞳術を仕掛けても打ち消し合い、距離を取って必殺技を放とうとしても、お互いにその動きを察知して潰し合う。
負ける未来も見えないが勝つ未来も見えない……そんな泥沼の戦いが続いていた。
だが……私の中で一つ不安なことがある。
「いいねいいね!
最高だよ!!」
戯は一見すると互角の勝負を楽しみ酔いしれているように見える。
互角の戦いが目的であり、その先は求めていないような発言もしていた……だが、それは事実だろうか?
戯が……私が……勝利を求めないなどあるだろうか?
キツネになって、戯のちょっかいを受けて散々思い知った……私は誰よりも負けず嫌いでワガママだ。
そんな私が互角の勝負をすればいい?
ありえない……不自然すぎる。
そう思った時だった。
「!?」
戯の振るう刀の一撃に若干反応が遅れる。
まだまだ致命的なものではない……だが、今までと同じように動いていたのに反応が遅れてしまった。
ここから私は少しずつ戯の攻撃に押され始めていた。
斬撃を防ぐ位置も、狐火の牽制も、今までは2人の中央付近だったのが、今では私の側に近くなっていく。
それは数センチではなく、数ミリ、いや、もっと短い距離だが、少しずつ私に近づいてきている。
真綿でジワジワと首を絞められるように、私の負けが近づいてきていた。
「く、どうして!?」
「あはははは、本当に互角だと思ってた?
確かに僕だけの力なら互角……いや、お姉さんは繋がった人達との絆がある分だけ僕よりも上だったかもしれないよ?
それなのに互角だったこと自体おかしいと思わなかった?」
……確かにその通りだ。
私達は今、九本目の尻尾で作られた神装を装着している。
これを装着することで、私達は自らを神格化して加護を生み出している。
それに加えて八本目の権能、繋がる力がある以上、この世界の誰ととも繋がりを持たない戯の方が力は下の筈である。
だが、現実として私はどんどんと押し込まれて不利な状況に陥っていた。
「僕は優しいからちゃんと答えを教えてあげるよ。
正解は……これさ」
戯は攻める手を止めて一旦後ろに下がる。
そして、何処からともなく取り出したのは尻尾であった。
「これは僕の尻尾じゃないけど、僕の尻尾だとも言える。
ここまで言えばお姉さんなら分かるんじゃないかい?」
「ま……まさか……」
「そうさ……僕は今まで渡ってきた世界の稲荷日向の尾を全てこの黒薔薇に捧げてきた。
分かりやすく言うなら僕が着けているのは黒薔薇+99ってところかな」




