終わりの始まり
それは突然の出来事であった。
前々から予想はしていた……だが、こんなに唐突にやってくるものだとは思わなかった。
終業式……冬休み前の恒例行事として体育館に集まり、校長の長い話の最中……世界は止まった。
「ね、ねぇ、ひーちゃん……これって……」
いつもならコンやリルの忠告があるのだが、当のリルは慌てて飛び出してきた。
「ひ、日向!
これは不浄では無いコン」
「ええ、分かってる。
来るべき時が来たんだね」
何となくだけど分かっていた……これが戯の仕業だという事を。
これは彼女が仕掛けてきた最後の戦いなのだと。
「何かあった時はスイヘブに行くように日和に言ってる。
だから、とりあえずそこに行きましょう」
「う、うん。
ひーちゃんに任せるよ」
こうして私はセッちゃんの手を引いてスイヘブに向かった。
道中の道も自分たち以外の時間は止まって、不気味な静けさが辺りを包んでいた。
「姉ちゃん!」
「日和、ちゃんと来てたね」
「今回のはいつもよりも不気味だったから……それでいて懐かしい感じがして変な気分になっちゃって」
「その感性は正しいよ。
さぁ、日和も行きましょう」
「ひよ君はこっちね」
セッちゃんが空いている方の手を差し出し、日和がその手を掴んだ。
そのまま3人でスイヘヴに駆け込むと、中から美幸さんと真由美さんが出迎えてくれた。
「日向ちゃん、これって……」
「すごく嫌な空気です……いつもと全然違う……」
やはり2人にも分かるのか、いつもの明るい雰囲気は無く、重く苦しい表情をしていた。
「やぁやぁ、お疲れ様。
きっとここに来ると思ってたよ」
突如、例の奥の席から声が聞こえた。
慌ててそちらに向かうと、張本人である筈の戯が呑気にパフェを食べている。
「いや〜相変わらず美幸さんはいい腕してるなぁ。
御礼にたっぷりと未知の体験をさせてあげるよ。
真由美さんと一緒に楽しんでもらえたらいいな」
「な、何を言っているの?」
「この子……怖い……」
丁寧にパフェを食べ終えた戯は、紙ナプキンで口元を拭きながらこちらに向かってくる。
「やぁ、日和。
元気にしてたかな?
僕がいなくなった途端に新しい女の子作るなんてプレイボーイだね」
「何を言ってるんだ?
俺はお前の事なんて知らないぞ」
「そう言えばあの時の記憶は無くなったんだっけ?
そっちの女の子は……よく知らないけど、お姉さんが上手くやったのかな。
まぁ、日和の事は残念だけど、君達も2人でたっぷりと楽しんだらいいさ。
さて……お待たせしちゃったかな?」
戯は戯けたような表情で私の前に立つ。
「そうね……いつか来るとは思ってたけど、こんなに唐突にやって来るとは思わなかったわ。
待たされたというよりは驚かされたわ」
「それならサプライズの甲斐があったよ。
先ずは招待状を渡しておこうかな」
そう言って戯が懐から取り出したのは一枚のカードであった。