決戦の予兆
季節は過ぎ、夏の暑さが引いて少し肌寒さを感じる。
あれ以降、神の遣いは現れず、戯も姿を見せない。
それは真守も同様であった。
私は学校に、バイトに、そして不浄の討伐と変わらない日常を過ごしている。
「うん、可愛くていいね。
気に入ったよ」
コンが仕上げたアクセサリーは鈴であった。
勿論動き回っている時に鳴ると邪魔になるので、飾りとしての鳴らない鈴である。
この鈴を私は首に身に付けた。
「気に入ってもらって良かったコン。
それじゃ、今日も気合入れて行くコン!」
コンと共に出現した不浄の元へと向かう。
最近は更に不浄の出現する割合が増えていた。
勿論、九尾に至った上で白百合を装備した私には何という事もない相手である。
現在、ほぼ無尽蔵の加護を制限なしに引っ張り出せる状況だ。
極論ではあるが、ゲートを潜った後に以前使った神滅を振るうだけで片付いてしまう。
取りこぼしがあったり、状況が掴めない可能性がある為にやりはしない……が、それが出来る事に間違いはない。
いずれ来るであろう決戦に向けて、白百合や自分の使える技の確認をしながら先へと進む。
「それにしても……日向も随分と強くなったコンね」
「まぁ……仕方なかったとは言え、個人でここまでの力を持っちゃっていいのかという気がしないでもない」
「日向なら正しく使えるから大丈夫だコン」
「そっか……その信頼を裏切らないようにしないとね」
最近は収まってきたとは言え、自分の中には暴走を引き起こしかねない激しい劣情が眠っている。
これを引き出さないようにしながら戯と戦う準備を進めなければ……
「それにしても運が良かったコンね。
白百合を手に入れてからこんなに実践経験詰めるなんて」
「それは確かに……」
本当に運が良かったのだろうか?
この事象を引き起こしているのは間違いなく戯だろう。
彼女は力を十全に引き出せた私と戦うことを望んでいるのかもしれない。
どうであれ、最終決戦は近い……そう感じながら私は実践という名の修練を積んでいくのであった。