キツネの装束
「それが新しい神装かえ。
尻尾を一本使っているだけあって実に神々しいのう」
既にある程度の情報は銀様の元に行っていたらしい。
私の姿を見た銀様は開口一番に白百合の感想を述べた。
「白百合だけでほぼ無尽蔵に加護を生み出せる代物になっているから使いこなすには修練が必要だとは思いますけど」
「聞いただけで身体が震え上がりそうな性能じゃな。
しかし、こうなるとこの神装はお蔵入りじゃな」
そう言って銀様が取り出したのは、今まで私が着ていたキツネの装束であった。
変身過程のプログラムも書き換えたので、こちらの神装は着る事はないだろう。
2人で感慨深げにその衣装を眺めていると、先程まで外で紅蓮さんと話していたコンがやってきた。
「大婆様に頼みがあるコン。
このキツネの衣装を譲って欲しいコン」
「次代の巫女の為に残しておこうと思っておったのじゃが……何故じゃ?」
「これをバラして再構築し直して、日向のアクセサリーにしたいコン。
日向の少しでも日向を安全にするために……お願いだコン」
銀様は瞳を閉じ、暫し考えた後で口を開く。
「これはその方の差金か?」
「いえ、某は何も…….ただ、娘が立派に成長してくれたことを嬉しく思ってはおりますが」
「魂魄よ……お主はかつて、巫女に憧れてこの装束を勝手に持ち出してお灸を据えられた事があったな」
「あ、あの時は子供だったから我慢できなかったんだコン。
でも、今回は……」
「今回も同じ理由なら激しく叱責したうえで巫女殿のお付きを降ろすことも考えねばと思った。
じゃが……成長したのう。
この衣装はお主にくれてやろう。
巫女殿の為に好きに使うが良い」
「本当だコン!?
とと様、早速仕立て直しに行くコン!!」
「あ、久しぶりにその呼び方をしたと思ったら……待ちなさい!
で、ては、某もこれにて失敬!」
キツネの装束を咥えて外に駆け出していったコンを、紅蓮さんが慌てて追いかけて行く。
「やれやれ、成長したと思ったが……まだまだ子供じゃのう。
巫女殿、魂魄が面倒をかけると思うがよろしく頼む」
「コンは私のパートナーですから。
いつも助けられてばかりですよ」
「そう言ってもらえたなら安心じゃ」
「あ、あの……コンは巫女に憧れていたんですか?」
「ふむ……そうじゃな。
何故あの子がお付きに選ばれたのか……少し話そうかの」