神装・白百合
戯に言われて今の状況を整理する。
幸いにも自分を遥かに超える戯で、神の遣いの大群は十分に抑えられるようだ。
……いや、待て……そもそも、そんな戯が何で八尾だった?
戯の口調から察するに一度この状況に追い込まれた事があるのは間違いない。
それを切り抜けている事……それに黒薔薇の材料。
更に先程の戯の言葉を思い出す。
九尾である限り神の使いは襲ってくると。
無数の点が頭の中で一つに繋がる。
その時であった。
「ひなたーーー!!」
背中にコンを乗せたリルがこちらに向かって走ってくる。
リルは器用に急ブレーキをかけて背中のコンを前方に跳ね上げ、そのまま咥えて横に一回転しながらこちらに向かって投げ飛ばす。
「お待たせだコン!!」
そのままコンは魂魄へと変化したので、私はそれを手に取った。
「ナイスタイミング!
悪いけど早速使わせてもらうよ」
「ドンと来いコン」
私は魂魄を構えると自分の尻尾に向かって徐に振り下ろす。
「くぅううううう!!」
その一撃で私の尻尾の一本が綺麗に切断されていく。
たかが尻尾の一本だと思っていたのだが、切断された瞬間に自分の中から何かが抜け落ち、耐え難いほどの苦痛が襲ってくる。
だが、こんな所で止まれない……止まるわけにはいかない。
気力を振り絞って飛んだ尻尾を掴むと、その中にある溢れんばかりの加護に自身の加護を練り込んで望む力を加えていく。
そして、それらが光の結晶となって私の身体を覆っていく。
それに合わせて、私の変身が解けて裸となったのだが、先ずは局部を隠すように黒いハイレグが私の身体を覆う。
そして、胸から胴を覆うように白い和装が現れ、腰から下を青いミニスカートが包み込む。
そこから胴体を覆うように黒いコルセットのようなものが現れ、更に紫色の紐が結ばれて固定していく。
腕の部分を黒を基調として白い柄が刻まれた布が、肘から伸びて手の甲まで覆い、手のひらで固定される。
脚は白い足袋が足首まで覆い、そこから水色の紐で固定されていく。
足元には黒い下駄を履かされており、こちらも鼻緒は水色だ。
この状態で背中を覆うように護国が包み込み、頭の横の部分には狐の面がセットされる。
「へぇ、僕の路線とは完全に反対方向に進むんだね。
キツネの尻尾もそのままだし」
私の姿を見た戯が感心したように呟く。
そう……これが神のシステムを回避する答え。
九尾が神のシステムに取り込まれるなら、尻尾を切り落としてしまえばいい。
更にその尻尾を使って新しい神装を産み出す事で力を余す事なく発揮する。
自分で神装を作るとなると、どうしたものかと悩んだのだが、戯の言う通りに彼女のコンセプトとは正反対になるように徹底した。
黒のゴスロリ服に対抗して白の和服であり、自分がキツネである事を捨てない為に、敢えてキツネの純粋な強化として作った今回の神装。
名付けるならばそう……黒薔薇に対抗して白百合と言った所だろうか。
これは言わば私から戯に対する宣戦布告でもあった。
お前の思い通りにはいかせないと。
いわゆる最強フォームというやつですね。
暴走強化フォームを経て最強フォームに至るのはお約束の展開ではないでしょうか。