キツネの危機 (ヒロピン回)
今回はヒロインピンチ回でございます。
ここから少しの間くらいピンクな雰囲気注意です。
ゲートを通った先は工場……いや、廃工場だった。
元は大型の機材があったのだと思うが、それも何処かに移動されたのか……何もない広い空間がそこにはあった。
その中央には人の形をした不浄が集まっており、何をするでもなく立ち尽くしていた。
「とりあえずは先手っと!」
近くにいた不浄を斬りつけて浄化すると、周りの浮上たちがこちらに気付き、一斉に向かってくる。
「うひ〜一斉にこっち向かれるとやっぱり不気味だなぁ。
まぁ、この間みたいにとんでもない数がいるわけじゃないし1人でも何とかなりそう。
真守が来る前にいっぱい倒しちゃおっと」
そう……この発言から分かる通りにこの時の私は完全に油断していた。
不浄はこの人型の敵しかいないと思い込んでいたのだ。
人型の不浄を相手にしていたときに、私の狐耳が後方から低い唸り声のようなものをキャッチする。
「なに?」
振り返って確認しようとするが、目の前の不浄が手を剣の形に変えて振りかざしてくる。
その一撃を魂魄で受け止めて行動を起こすのが遅れてしまったのが命取りであった。
唸り声の方を見ると犬の形をした不浄が凄い速さで、こちらに突っ込んできている。
慌てて何かリアクションを起こそうしたが、その瞬間に脇腹に強い衝撃を受けて吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた先には空の段ボールが山積みになっており、そこに頭から突っ込んだ私の上に段ボールがバラバラと落ちてくる。
結果、私は段ボールに上半身が埋まってお尻から先が外に出ているというマニアックな状況になってしまった。
「あわわわわ……早く脱出しないと……ひゃっ!?」
段ボールをどかそうと力を入れようとした時であった……私のお尻に何かが当たる。
「え……な、なに?
スンスンって聞こえるけど……」
そこで私は先程の不浄の姿を思い出す。
一瞬しか見えなかったが、あれは明らかに犬の姿をしていた。
アレが犬の習性を持っているとすれば、今行われていることはただ一つである……そう、お尻を嗅いでいるのだ。
「ひ……い、いやぁ……」
男の時であったなら犬に尻を嗅がれた所で何とも思わなかっただろう……しかし、その事実に気付いた私にどうしようもないほどの羞恥心と嫌悪感が湧き出していた。
それらの感情を懸命に抑え込みながら、この状況から脱出しようと力を込める。
だが、露わになっている太ももに何かヌルッとした感触が伝わり、身体に電撃が走ったようにビクッとなった。
「え……なにぃひい!?
ま、まさか舐め、ひゃん!!」
姿は見えないが、犬の不浄は私の太ももをペロペロと舐め始めたらしい。
舌が太ももを伝う度に身体がビクッと反応して力が抜けていく。
「だ……だれか……たすけ……ヒィーーン!!」
私は情けない格好のままどうすることも出来ず、我慢できない叫びをあげながら助けを願うことしか出来なかった。