神のシステムと戯の思惑
本日三本目です。
「何しに来たの?」
警戒しつつも現状では手が出せない相手である。
「え、何か困ってる感じだったからアドバイスに来たんだけど。
ん〜前とは違う雰囲気だなぁ……まるで僕の正体を知っちゃったみたいな?」
「なっ!?」
「冗談で言ったんだけど当たりだったかな?
まぁ、その辺りは正直どうでもいいんだけどね。
前も名乗った通りに僕の名前は戯。
それが全てさ」
彼女は戯けるように語る。
「そこも正直どうでもいい話だよ。
お姉さんが知りたいのは九尾になったらどうなるか……でしょ?」
「知っているの?」
「もちろん!……一度なりかけたからね。
九尾になっちゃうと神というシステムに取り込まれるのさ」
「システム?」
「そ、あいつらは誰も救わないし助けない。
仮に助けられたと言う奴がいても、それはシステムに沿って動いた結果に過ぎない。
キツネとオオカミの神だってそうさ。
不浄という存在が現れたら、地上の生き物に力を与えるシステム……それだけの存在さ」
「そんな……」
戯の語る内容に言葉を失う。
私自身、神というものを強く信じていたわけではない。
しかし、この活動を始めて、キツネという存在になり、加護を受けることでそのような存在を信じることが出来るようになっていた。
「あいつらが本当にいて自由に活動できるなら、僕という存在は排除されて然るべきでしょ?
でも、あいつらは僕に一切手出しが出来ない……それは何故かって?
並行世界からやってきた異物に対するトラブルシューティングなんて持っていないからさ」
戯は心の底からおかしいという風に笑い出した。
「地上でチョロチョロ湧き出している不浄なんかよりも、遥かに危険なものがやってきているんだよ?
それなのにあいつらは見て見ぬふりさ。
だから、奴らはシステム内で出来る限りの事をした。
それは何か分かるかい?」
「え……」
突然の問いかけに対応できずに固まってしまう。
「まぁ、ここままじゃヒントが無さすぎるよね。
奴らは僕に対抗する為に新たなシステムを作り上げる事にした。
それは急ピッチで行われる事になり、僕が見てきた世界ではその変化についていけずに自滅する者が殆どだったよ」
神というシステムを増やす。
急ピッチでそれは行われた。
九尾に至ったものは神になる。
点が線で繋がった気がする。
「まさか……私の尾が増えるペースが早いのって……」
「ご明察!
あいつらはお姉ちゃんを神に迎え入れ、僕を撃退しようと思ったんだろうね。
だから加護の供給量を増やしたんだと思う。
本来ならその量でパンクするところだったんだから……僕に感謝して欲しい所だね」
「それって……」
神の思惑だけに今までの戯の行動を照らし合わせると全てが繋がった気がした。
「そう、お姉ちゃんを与えられた加護に耐えられるように試練を与えていたのさ」