10日に1本
今日も祝日でしたね。
今日は三本です。
「とりあえず、明日はキツネの里に報告に行かないとね」
幸い、明日は休日でバイトの予定もない。
「大婆様やお父さんに連絡しとくコン」
と言う事で、次の日は朝から狐の里に向かうことにした。
「巫女殿、よくお越しくださった!」
ゲートを潜るといつものように紅蓮さんが出迎えてくれたのだが、その周りにも多数の里の者が集まっていた。
「あれは八尾になった日向を見に集まってるコンね。
野次馬ならぬ野次狐だコン」
「おお、その声は魂魄か。
巫女殿に立派にお仕えしておるようだな」
「コンにはお世話になりっぱなしですよ。
それで報告なんですが……」
「ふむ……そちらに見えている八尾についてですね。
ここでは話しづらいでしょうから、先ずは大婆様の所に向かいましょう」
そう言われて案内された場所は以前と同じ建物であった。
中に入ると前と同じように銀様が奥に鎮座している。
「巫女殿、よう参られたのう」
「お久しぶりです。
まだ此方にいらしたんですね」
この場所は代々、村の重鎮が住まう場所であり、権限を全て里長である紅蓮さんに譲った銀様は退去していると思っていたのだ。
「妾もそのつもりじゃったのじゃが……紅蓮の奴が思うておったより石頭でのう」
困った顔をして紅蓮さんの方を見る銀様。
「私のような若輩者では巫女様を最大限にサポートするなど無理な話です。
銀様の力は必ず必要になるので、里長のアドバイザーとしての役割を頼んでおります」
「と言うわけじゃよ。
婆使いの荒い里じゃて」
「なんのなんの。
里の誰もが大婆様に勝てぬ以上は、まだまだ頑張ってもらいますぞ」
「全く……仕方のない話じゃ」
呆れたように言いながらも何処か嬉しそうな銀様。
何だかんだと言いながらも落ち着く所に落ち着いた気がする。
「さて、本題に戻ろうかのう。
以前なら喜んでいた所じゃろうが……流石の妾も呆れて物が言えぬぞ」
そう言って銀様は私の尻尾を見る。
「かつて1人しかいなかった八尾に最短、最年少で到達。
期間は約二ヶ月……巫女殿よ。
単純計算で10日に一本ペースで増えておるではないか。
これは10日後には伝説の九尾が誕生かのう」
「い、いやぁ……流石にここからは中々大変なんじゃないですかね?
「そう言いながら、しれっと九尾になってる気がするコン」
「私もそのような気がしますなぁ」
「本来ならあり得ぬことじゃが、現在の巫女殿では強ち否定はできぬのう」
そう言って三者三様の視線を向けるので居た堪れなくなってきた。