日和とセツナ
今日は一気に5話更新です。
姉ちゃんの唐突な提案でセツナさんを送る事になったのだが……先程と違ってセツナさんは大人しかった。
俺も何を話したらいいか分からずに無言で歩いていたのだが、セツナさんがポツリと溢すように呟いた。
「ひーちゃんってさ……あんなに可愛いのに、とっても強いよね」
「……そうですね。
多分、いま師匠……真守さんがいなくて寂しいと思うんです。
でも、周りに心配かけないように空元気で振る舞ってるんですよ」
「うん、分かるよ。
実は私ね……最初はひーちゃんに酷いことしちゃったんだ。
でも、そんな私を許して、助けてくれて友達になってくれた……だから、出会って日は浅いけど、ひーちゃんのことが本当に大好き。
ずっと仲良くして欲しいと思ってる」
「そう……なんですね。
俺も、俺も全く同じですよ」
「同じって?」
お互いに顔を合わせないまま、言葉だけを紡いでいく。
「俺も姉ちゃんに酷いことしちゃったんです。
でも、姉ちゃんは自分も悪いからって許してくれて……誰が相手だってそうなんですよ。
長いとか短いとか関係ない……自分が大切に思う人達が困ってたら放って置けない人なんです。
だから、俺も姉ちゃんのことは大好きだし、弟として産まれて良かったって思ってます」
そう言いながらふと隣を見上げる。
見上げた先にはセツナさんの顔があり、彼女は同じように俺の顔を見ていた。
「ふふ、ひよ君って私って同じだね。
ひーちゃんに助けられて、そんなひーちゃんが大好きで……心の中で寂しがってるから、一緒にいて元気づけたいと思ってる……でしょ?」
「はは、そうですよ。
俺だけで真守さんの代わりになるか不安だっんですけど……セツナさんも一緒に姉ちゃんを支えてくれるなら安心です」
「ひよ君って……何だかいいね。
ねぇ……折角並んで歩いてるんだし、手を繋がない?」
セツナさんはそう言って立ち止まり、手を俺の前に出してきた。
「え?でも、こんな子供とじゃ変に思われますよ」
「それこそ知らない周りから見たら姉弟に見えると思うから大丈夫だよ」
「……それもそうですね。
それじゃ、失礼します」
そう言ってセツナさんの手を握って先を歩き出す。
彼女のペースに合わせながら。
「ひよ君ってこうやって女の子と手を繋いで歩くの初めてじゃないの?
なんか慣れてる気が……」
「え?いや、初めてですよ。
夢の中で経験したんじゃないですかね?」
「それじゃ練習の成果が出てる感じだね。
一緒に歩いててとっても心強いよ」
「え……あ、ありがとうございます」
こうして俺とセツナさんは手を繋いで歩いていたのだが……事件は彼女の家の近くで起きた。