日和、抱えられる
本日2話目です。
部屋でダラダラと話していたのだが、自分の部屋という事で完全に気が抜けていていつも通りの行動を取ってしまっていた。
言い訳ではないが、これは意識的にやったわけではなく、完全に無意識で行った行為である。
なので、せっちゃんに指摘されるまで全く気付かなかったのだ。
「ひーちゃん、ずっとそのぬいぐるみ抱いてるね。
そんなにお気に入りなんだ」
そう……真守から貰った狼のぬいぐるみをずっと抱きしめながら、セッちゃんと会話していたのだ。
「あ、え、これは……その……やっぱり子供っぽいかな?」
自分でも全く気付いていない事を指摘され、思わず狼狽えて顔が赤くなる。
「え、全然そんなことないよ。
寧ろずっと可愛いなぁって思ってたし。
それに大事そうに持ってるのが何か微笑ましくて良かった!」
セッちゃんはそう言ってサムズアップで返してくれる。
「そっか……それなら良かった。
このぬいぐるみね……真守から貰ったんだ。
最近は学校休んでて会えないけど、この子が代わりになってくれるから平気なの」
「うわ、ひーちゃんってば乙女じゃん。
いいなぁ……そんな風に思える相手がいるって」
「セッちゃんだって可愛いし良い子だからすぐに見つかると思うけどなぁ。
あ、あの場所に居たようなクズはお友達として認めないからね!」
「あはは、ひーちゃんが認めてくれるような男の人だったら絶対に安心だね」
「ふふ、任せといてよ。
こう見えても人を見る目はあると思うから」
そうやって笑い合っていた時だった。
コンコンと扉がノックされる。
「姉ちゃん、友達が来てるとこ悪いけどちょっと良いかな?」
扉の奥から日和の声が聞こえた。
「え、弟くんがいるの?
見たいから部屋に入れちゃってよ」
「あ……多分あの件だと思うから日和もいた方がいいか。
日和、入ってきていいよ」
私が許可を出すとガチャリとドアノブが回る。
「姉ちゃん、話は友達さんがいない方が……」
「キャーーーー可愛い!!」
「え、なに、うわ!?」
日和の姿を一目見たセッちゃんが飛びかかって抱きしめにかかる。
日和はどうしたら良いか分からずに硬直する。
それを好機と見たセッちゃんはすかさず日和を抱えて先ほど座っていた位置まで戻ってきた。
つまり現在の状況は狼のぬいぐるみを抱えた私と、日和を抱えたセッちゃんがテーブル挟んで向かい合って座っているという……言葉にすると良く分からない状況になってしまった。