新しい仲間
「……と言うのが今までの経緯です」
これまでの経緯を話すと2人とも真面目な顔のまま固まってしまった。
今回話したのは性別が変わったと言う事以外の全てである。
ざっくり説明すると日和に話した事と全く同じであり、不浄との戦いや、何故時間が止まるのかという事を説明した。
後は試しにコンを呼んでみたのだが、2人ともに見えていた事から、止まった時間の影響を受けない人間はコン達を見る能力もあるようだ。
もう一つの実験として幻覚の映像と重ねたカメラを見てもらったのだが、ブレて見えるのは美幸さんだけであった。
ともあれ、そのような事をして私の力を披露しながら話を進めたので、真由美さんにも信じてもらえると思う。
動かない2人を見てどうしようかと考えていたのだが、先にセッちゃんの方が行動を起こした。
ひーちゃん、今まで知らないところで頑張ってたんだね!
うえーん、ありがとおおお」
感極まった様子で泣きながら抱きついてくるひーちゃんの頭をぽんぽんと撫でる。
「これ……冗談でも何でもなく本当のことなんだよね?」
「ええ、冗談でも何でもないです。
今だって……ほら」
私は人差し指を立てるとその先に炎をボッと灯した。
そして、それを握り込みながら消す。
「手品みたいにタネや仕掛けは無い……正真正銘、私の力です」
「そう……分かったわ」
そう言って真由美さんは席を立つ。
その態度にセッちゃんがオロオロする。
しかし、すれ違いざまに真由美さんは私の肩をポンと叩いたので振り返る。
「私はきっと貴女の力にはなれないと思う。
だけど人知れずに戦う稲荷さんの事は尊敬するし、感謝してる……無茶だけはしないようにね」
「はい、ありがとうございます」
そう言って去っていく真由美さんに頭を下げる。
「怖い人かと思ったけど良い人なんだね」
「うん……時々変な暴走しちゃって困る事もあるけど、美幸さんも真由美さんも、私達を助けてくれるとっても頼りになる人達なんだ。
特に美幸さんは私の理想っていうか……あんな風になりたいって思わせてくれる人だね」
「そっか〜ねぇ、ひーちゃん。
私もここでアルバイトって出来ないかな?」
「え?そんな急に……」
「日向ちゃんのお友達なら大歓迎ですよ。
丁度空きもある事ですし」
「うわ、ビックリした!?
いつから居たんですか?」
「丁度アルバイト出来ないかなと聞こえてきましたので。
えーっと、セツナちゃんでしたよね?
本気でこの店で働きたいですか?」
「はい!
ここで働いて、ひーちゃん憧れの人に教えて貰いたいです!!」
美幸さんの問いにセッちゃんは元気に手を上げて返事をする。
「あらあら、予想以上に素直で可愛らしい子ですね。
では、これからよろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いします!!」
「怒涛の展開についていけないけど……まぁ、セッちゃんと働けるのは良かったかな」
「ひーちゃん、一緒に頑張ろうね!」
こうしてスイヘブは新たな仲間を迎える事になったのであった。