クラスメイトの罠
「はぁ〜」
授業の終りを告げるチャイムが鳴った途端に、机に顔を突っ伏してため息をつく。
そんな私の肩にポンと手が置かれた。
「最近ため息ばっかじゃん。
やっぱ大山がいないと寂しい?」
声をかけてきたのはクラスメイトの……えーっと……た……田辺さん!
そう、田辺さんである。
「そりゃ……ねぇ?」
「稲荷がそんな顔してるの似合わないって!
今日はパーっと遊ばない?
偶には大山以外と遊んだって罰は当たらないっしょ」
「え〜どうしよっかなぁ」
正直名前もうろ覚えなクラスメイトの誘いは面倒だと思った。
だが、最近は大変な事続きで気分が落ち込んでいるのも確かである。
パーっと騒ぎたい気持ちが無いかと言えば嘘になるだろう。
そんな風に悩んでいると……
「だから悩まないで頭空っぽにするし!
ほら、行こ!!」
そんな風に言って強引に腕を掴んできた。
「分かった、分かったから!
どこ行くの?」
「とりあえずオケは確定っしょ!」
そんな理由で私は田辺さんに連れられてカラオケに行くことになった。
「何処に入るの?」
駅前には沢山のカラオケボックスがある。
バイトのお金があるので、多少高級志向な所でも問題ないだろう。
「こっちこっち!
超安くてお勧めの店があるんよ!!」
そう言って田辺さんは私の腕を取って路地裏へと入っていった。
「何か汚くない?
周りの建物もボロいし」
「そこの店は最新の機種揃えてて超良いんだって!
ここ、ここ!!」
そう言ってボロいビルの地下へと向かっていく。
引っ張られるようにして進み、中に入ると……そこはカラオケ屋をやっている様子はなく、広い部屋のあちこちに男達がたむろっていた。
彼らは私の姿を見るとニヤニヤとした下卑た笑みを浮かべている。
「はぁ〜こんな事だと思った。
帰る……」
周り右して出口へ向かおうとしたのだが、その扉を塞ぐように田辺さんが立っており……
カチャリと、扉を閉める音が聞こえた。
「えへへ〜ごめんねぇ。
私、こいつらに弱み握られちゃっててさ……稲荷を連れてこないと私が酷い目に遭わされちゃうんだよね」
そう言いながら田辺さんはスススッと物陰に隠れ、その近くにいた男がずいっと前に出た。
「はぁ〜本当に面倒くさい。
それで……私に一体何の用なの?」
部屋の奥のど真ん中、偉そうに座っている男に話しかける。
彼は一昔前のヤンキーのようなスタイルをしており、私の中でのあだ名は番長に決定である。
「これだけの人数の男に囲まれてるってのに大した度胸だ……やはりお前のような最上の女は俺にこそ相応しい!
要は俺の女にしてやろうって話よ」
訂正……こいつは番長なんて男らしいものじゃないな。
唯の下卑たクズ野郎だ……なら遠慮は要らないかな。
そんなクズの前まで歩いていき、目の前まで来たところでニッコリと笑う。
「へへ、そいつは了承って事でいいんだな。
この乳が俺様のも……げふうううう!?」
何を勘違いしたか知らないが、私の胸に手を伸ばしてきたクズを正面から殴り飛ばす。
クズはそのまま吹き飛んでいって背後の壁に叩きつけられ、ピクピクと痙攣し始めた。