並行世界での出来事 2
本日も2話更新
「2人で……堕ちた……?」
「ああ……そして、狐の巫女が主人に、狼の巫女が従属されているという関係になったのだよ。
狼の巫女は……助けられなかった罪悪感と責任感。
更に狐の巫女から与えられる愛に溺れ、彼女に逆らえなくなってしまった。
この事実に危機感を抱いた狐と狼の里が協力して、2人の堕ちた巫女の討伐を決意した。
結果は……今のアレが全てを掌握している事から分かるだろう」
今の戯は時間と空間の能力を全て使いこなしている。
つまりは……両方の里がまとめて滅ぼされてしまったのだろう。
「狐の巫女は主人としての優位性から狼の加護も吸収……両方の力を手に入れた。
その後、欲望の赴くままに世界を渡り歩き、全てを堕落し破滅させていく」
「何でそんな事を?」
「彼女は穢され、堕ちる事に最高の快楽と幸せを見出した。
こんなに気持ち良くて、こんなに幸せなことを知っている自分は何て恵まれているのだろう……と。
そして、そんな素晴らしい事を経験していない世界中の人達は何て不幸なんだろう……と。
ならば、自分が世界の人々に教えてあげよう。
人生最大の快楽を!
人生最大の幸福を!
……これが今も変わらないアレの行動方針だ。
逆に言えばアレはそれだけしかしない。
その後、快楽に呑まれて廃人になったところで関係ない……幸せなまま人生終えれて良かったね。
このぐらいの感覚だ」
疋様の言葉に絶句して何も言葉が出てこない。
確かに戯は言っていた……面白可笑しく生きる事にしか興味がないと。
そして、この劇の結末が喜劇になろうが悲劇になろうが関係ないと。
彼女は堕ちる喜びを教えるだけ。
後は何の責任も持たず、その劇を楽しむだけ。
何という恐ろしい化け物なのだろうか……悪意なく人を貶めれる存在とは。
「最初の世界の人間を全て堕落させた狐の巫女。
全てを楽しむはずの彼女は一つだけ楽しめない事があった」
「そんなものがあったの?」
話を聞く限りではそんなものは無さそうだが……
「狼の巫女の存在だ。
自分に付き従い、何でも言う事を聞く彼女の存在は、狐の巫女が憧れた姿からは程遠いものだった。
だから……彼女は捨てた。
自分の理想に会いに行くために、最初の世界に捨てていって次の世界へと旅立ってしまった」
「そんな……その世界の真守がどうなったか分からないの?」
自分勝手な理由で捨てられた真守の気持ちを思うと、戯に憎しみすら湧いてくる気分であった。
滅んだ世界にただ1人残された彼女はどんな気分だったのだろうか?
「……いや、分かるよ。
そうだな、その先の事も話しておこう」