日向、激怒する
祝日なので2話更新しまくる
10分後、学校の制服に着替えた私は、先程の女性の向かい側に座っていた。
何となく正体は予想が付いていたのだが、本人も隠す気がないのだろう。
席に戻ると、横にいつの間にかやってきていたリルを侍らせていた。
「すいません、お待たせしました」
「いやいや、何も待ってなどいないさ。
私は君とおしゃべりするのを楽しみにしていたがね、それを待っている時間というのも悪くはないものさ」
「よくもそんなにペラペラと歯の浮くような台詞が出てきますね」
「本心から言っているのだがお気に召さないかな?
まぁ、これからじっくり話して仲を深めるとして……」
チラリとリルを見ると、その視線の意味に気付いたリルが動く。
「こちらは我らの里長である疋様だ」
「やっぱりそうなんですね。
あの時の記憶は残っていましたが、今回はあの時と違って随分堅い格好をしているので分かりづらかったですよ」
「あんな胸を曝け出した巫女服で歩いてたら唯の痴女だからね。
TPOは弁えてるさ」
疋様はそう言って戯けたように両手を上げた。
「それで……私のところにわざわざやって来たという事は真守に何かあったんですか?」
「うん?何で真守の話が出てくるんだい?」
「何でって……写真も持って来てたし、真守の報告に来てくれたんじゃないんですか?」
「全然違うよ〜私は君と話をしに来ただけさ。
さっきの写真は君が席に座ってくれるための餌みたいなもんさ」
「ちょっと!
この人どうなってるの!?」
疋様のあまりの言い分に思わずリルに問い掛けてしまう。
「申し訳ないとは思うが、こういうお方なのだ。
満足すれば帰ると思うので付き合ってやってはくれぬか?」
「はぁ〜仕方ないか。
それで、何が聞きたいの?」
私は先程までと違いぶっきらぼうに話す。
ここまで自由人な疋様……いや、疋には遠慮など要らないような気がしたからだ。
「お、そっちの方が余程いい感じだね。
それで、聞きたいことかぁ……何にするかな?」
「考えるふりしてるだけで最初っから決まってるんじゃないの?」
「お、ご明察!
君ってば、また懲りずにあの力を使ったって言うじゃないか。
最初リルに聞いた時は驚いたよ」
そう言って戯けている疋ではあるが、目の奥が全く笑っていない。
「アレって……黒薔薇の事?」
「そうそう。
リルの話ではしっかりと使いこなしてたって言うけど本当なのかなってね」
私の心の奥底まで見透かすような瞳でこちらを見る疋。
……つまり、この人はこう言いたいのか。
お前は本当は黒薔薇に精神乗っ取られてて、今は擬態してるだけじゃないかと。
ふふ……全くもって人を馬鹿にした話だ。
この行動によって彼女は私が黒薔薇の影響を受けてると思うかとしれない。
だが、ここまでの数々の行動で私の我慢は限界であった。
私は机の上にあるコップを掴むと、その中身を疋に向かってぶちまける。
「あんまり馬鹿にするのもいい加減にしなさい!」