表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪夢の夜に  作者: 赤さん
278/281

3節最終章 絶界ノ終極天編 Ⅱ-Ⅺ



誰もが、幸せでありたかった。




当然の今日が、なんでもない笑顔で溢れる1日が



永遠に

永遠に

永遠に

永遠に

永遠に




永遠に...


続けば



よかったのに。







エマが両手を大きく広げる。


「我光の元に召され、忘却の大海より出て、その力を示せ。「終極天魔法α 聖命廻軌」」



エマの指先が砕け落ち、伝わる強い痛み。魔力の胎動。走る神経の電撃が、走馬灯をもたらす。



エイレーネ王都へと向かう途中。


移動の最中にも、皆はラインハルトをどう止めるかを話していた。


だがエマだけはすべて最初から知っていた。決まっていた。



「妾が、ゲンジが復活するまでの時間を稼ぐ。


この後に及んで、時間稼ぎとはの。根源とはやはり最悪の代物じゃの。根源は。」


「教えてくださいエマ様。このシャルロットの目は。この力はなんなのですか。

私はなんの生贄も喰らっていないのに。」



「王とは、導き手。

命は平等。

性質も何もかも、同じ人間じゃ。


じゃが根源はそうとらえてはおらんらしくての。

妾達は観測することしかできぬ。そこに理由を与えることしかできぬ。単なる希望的観測じゃがの。


まるで、人間の命が平等じゃないと言っているようなもんじゃ。


その力が、ヨルの生み出した力のモデルじゃよ。

原初のガーデン。

血統という強い縛りを持った不可侵の力じゃ。


ペトラ、エレーナ。

ゲンジを救うことができるのは其方らしか居らぬ。



必ず、あの子を救ってやってくれ。」







この魔法、この鼓動。身体を破壊される感触。

神経が弾け、体の至る所が弾けるような痛みを伴って、大気に突き刺さる感触。


この瞬間のため、この一瞬のため、この運命を選び取るため、何もかも捨て去った。

全てを捨てたのは貴様だけではない。



「ラインハルト。お前だけじゃ!!!」


「始めよう。終極天魔法(¬)インバース、「極光反転」」」





地中の奥深くにある魔素の一滴までが活性化し、地面が凄まじい勢いで砕け散る。


ラインハルトの天上には光輪が幾重にも広がり、突き刺さるような光明が降り注ぐ。





ラインハルトを正面に見つめる大通り、ゲンジを下ろすペトラとエレーナとシャルロット。


「彼を頼むわ、ペトラ。」


「ええ。ペトラ。」


「ペトラ、エレーナ。貴方達に会えて本当によかった。最後の瞬間に私の初めての友達に出会えて本当によかった。


まぁ、貴方にとっての一番は、私ではないけどね。



エレーナも、もっとたくさん貴方を知りたかった。こんなことにならなければ。


でも、全部彼が。彼が、この出会いを、この運命を導いてくれた。


戦いの中にも光はある。人は失うから守ろうと思える。

人は弱いから、優しくできる。でしょ?」



シャルロットが微笑み、ペトラとエレーナも自然と笑いが溢れる。



「シャル。」


ペトラが手を差し伸べる。



「ありがとう。でも、これで最後じゃないから。

ゲンジも救ってこの世界も救う。それが、貴族として、王としてのアンタの覇道なんでしょ?


諦めたらダメよ。アタシも、最後の一瞬まで戦い続ける。」



「ええ。」


温もりが、肌を伝って、心に光を灯す。


エマの強大な魔法の動きに導かれ、シャルロットはエマの方へと走り出すと、ペトラはエレーナと目を合わせ、頭上に広がる光輪を見ていた。



「エレーナ、準備はいい?」



「ええ、覚悟はできてる。」


「エレーナがゲンジの中に入ってる間はアタシが何がなんでも守る。


でも、相手はラインハルト。シャルロットもエマさんも手伝ってくれるから多少は時間も稼げるだろうけど、たくさんは無理。


あと、ゲンジの中に入ったら」

「無理は禁物。でしょ?わかってるわ。でも、ゲンジ君が助けてくれるはず。


信じてるわよ。ゲンジ君。」








極光を持つラインハルトの育てたゲンジという闇。

ゲンジが強くなればなるほど思惑通りになるというのなら、最もラインハルトから遠い理想、そして我々の思い描く理想を体現できる選択。



「いくよ、ゲンジ君。」



エレーナは座り込み、項垂れるゲンジを抱き寄せその相貌が蒼く変貌し、ゲンジの中へと吸い込まれていく。



その姿を遠く見下ろすラインハルトは顔を歪め、不快感を露わにする。


「くだらない人間風情が。争うだけでなく盃を穢すなど。」


ラインハルトは手を挙げ、魔力を射出すると目にも止まらぬ速さで残されたペトラとゲンジの体を襲いかかる。



ペトラは大きく振りかぶった剣に魔力を込め、振り抜こうとした刹那、目の前に飛んできていたはずの発射体は嘘のように消え去り、太陽のような光輪を塞ぐ大きな背中をただ茫然と見つめるしかなかった。



「これ...」



街の反対側まで走り抜けるシャルロットもその姿、その魔法の全貌を捉え、狼狽えていた。


「蘇っていく...全員。これが、憶の戦姫の魔法...」





シャルロットはラインハルトの背後へ回り込みながら、ラインハルト目掛けて襲いかかるいくつもの人間の影を捉えた。



1人ではない。エマの輝きに導かれ、その眩い光が街を埋め尽くし、そこから散っていった戦士達が現れる。



「終極天魔法a...あの魔法、兄様の記憶にあった...」


負傷したツバキとミーシャの近くを守りながら、ウメが呟くとツバキが少し微笑う。


「他人の記憶を壊すほどの魔法に、あの子はたった一撃で一国を破滅に導く。

何が何だか...」


「私達は止めません。貴方達も同様です、メイド達。もし、戦いたいというのなら、ウメは帝として止めません。


己の信念に従い、この戦いに真の勝利を望むものの元に勝利は舞い込む。」


その光景を見て、ラインハルトの相貌はより深い暗闇を迸る。


この魔法が、我をさらなる進化へと導いた。

感謝しているわけではない。これは、我の選択の結晶だからだ。


ラインハルトは目にも留まらぬ速さでペトラとの実体の距離を詰め、剣で襲いかかる。





「借りる。」




ゲンジの身体に手を伸ばし、ゲンジの力ない手に手を重ねると現れる大きな剣は、風に揺れる白い髪の間から見える真っ赤な閃光をより強く映す


刹那、街の建物が一撃の衝撃波で傷を帯びる。

だがやはり、その剣がペトラに届くことはない。



「クリス!」


「選ぶ相手を間違えているぞ、ラインハルト。」


クリスが大きく剣を弾く。


ラインハルトが追撃を選択した刹那、身体を襲う強い痛み。


そしてどこからともなく現れた気配。


「そっちからきてくれるとはね。」



大きな鉤爪がラインハルトの胴を貫き、背に作られた影に実体を帯びるオーヴィスの姿。


さらにゲンジを抱き抱えるペトラとクリスの間に生まれる何人もの魔法使い達が、その行手を阻み、より深い極光の影へとペトラを隠す。


ラインハルトとヨルすらも弱体化させるその魔法。

ゲンジのような禁忌の魔法でも、ラインハルトの大出力の魔法でも、ヨルのような破滅的なものでもない。


その手で看取ってきた先人達その魂が魔法によって受肉する。


運命の歯車が再び動き始める。



ラインハルトの動きは完全に封殺され、ゲンジとの距離がどんどん離れていく。


そして戦士達に埋れれば埋もれるほど割かれるラインハルトの意識。


その針の穴を通すような軌道が街に一本の白銀線を描く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ