大魔王
魔王の城の薄暗い部屋、一段高い所から鈍く響く声。
「皆、揃っておるようだな。」
各地から招集された禍々しき一同。強面の中にも、緊張・神妙が見え隠れ。東西南北地下海空、揃いも揃った魔将軍七人がこの表情。怪訝な顔で一同を見下ろすのは、我等が魔王。
魔界にこの人あり!と恐れられた魔王の機嫌が悪い。定例会で虚偽の報告があった事が判明。それも、どうやら1つ2つでは無いらしく、将軍達は各々“自分はバレてない”事を願っている。
「定例会後間も無いが、各自報告をしてもらいたい。」
魔王が一声放つと空気は更に凍りつく。
東「新たに魔王討伐隊が編成され、第35期は武術家・僧侶が主な構成となっております。」
西「第20〜30期討伐隊は、現在も祠を攻略中。村に立ち寄っていないようで、壁のボタンを見つけられずにいます。」
南「第17期以降、魔王討伐隊の確認はされておりません。」
北「第1〜6期までの殲滅確認後、7・8・9期の塔到着を確認しています。」
地下「マグマの剣は、ケルベロスにより厳重に保管されております。」
海「大海原の盾、クラーケン、共に健在です。」
空「天空の鎧も、コカトリス・魔道士の結界にて封印されております。」
魔王討伐隊は現在50期、壁のボタンは押さずとも祠攻略、30期までは南で確認済み、6期までの殲滅はしたものの、23期までが塔の下で集落を形成中。 ここまでが魔王の知るところ。東西南北の嘘はハッキリしたが、想定内で問題無し。かつて魔王を倒したと言われる武具の在り処を求め、塔に集まるのも情報操作どおり。絶妙なバランスで魔界と人間界は、それぞれ平和と恐怖を味わっている。
魔王は一同に叱咤激励を述べ解散を告げる。そして魔王は緊張の面持ちで一人隠し部屋に入ると、目を閉じ手を組んで喋りだす。
「勇者様ご安心下さい。剣・盾・鎧の全て無事で御座います。また勇者様の素質を持つ者も現れていない様子で御座います。」
➖しわがれた声➖
おいおい、ここでは大魔王と呼べと言うとるじゃろ! 全く仕様の無い奴め。お前を倒して伝説になるのは儂一人で充分なんじゃ!無駄に復活なんぞしおって馬鹿が!成仏せんで正解じゃ。しかしお笑い草じゃのう、魔王が勇者の幽霊が恐いとは“バレたら”
将軍達の謀反じゃな。ガヒャヒャヒャヒャ!儂は未来永劫唯一無二、お前は永遠に魔王としてふんぞり返っとれ。それがお互いの為じゃ!ガヒャヒャヒャ!
勇者と魔王の関係も絶妙である。