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第79話 千夏

プリンセススクールもまた更新します♪


 彼女の名前は宮野千夏。国立音楽大学に通い、大学の近くのアパートに一人暮らしをしている。音大生の中でもかなりの美貌の持ち主であり、ピアノとヴァイオリンを弾きこなすサラブレッドのような天才演奏家であり彼女の演奏はプロのピアニストに匹敵する程の腕前だ。

宮野千夏の愛する協奏曲はチャイコフスキーのピアノ協奏曲。半年前に大学の新人デビュー演奏会で演奏した。千夏という姉にゆりはずっと憧れていた。音大生として音楽を奏でている姉の姿は本当に輝いていた。千夏は論文ではチャイコフスキーのピアノ協奏曲について必死に分析を行った。チャイコフスキーは生涯、ピアノ協奏曲を三曲作曲した。第1番変ロ短調、そして技術的な難しさからプロですら演奏至難と言われている第2番ト長調。

交響曲を編曲したと言われている第3番変ホ長調。

千夏は第1番と第2番について論文で分析した。圭一がゆりの家に泊まった翌日に千夏は実家に帰ってくるつもりだった。

ゆりが圭一と付き合っている事を千夏はまだ知らない。

千夏は実家に帰った後、ミュージカルを見に行く予定なのだ。

アパートから電車に乗ってふとスマホを眺める。スマホにはオペラの映像が流れていた。モーツァルトのオペラ、魔笛だ。

最近千夏は大学でオペラ伴奏を行う一方、コンチェルトを積極的に弾いている。ラフマニノフやチャイコフスキーなどのロシア物を得意としている。将来は留学を考えている。その為には語学を

昨日のコンチェルト演奏法のレッスンで教わった事を思い出していた。


「もっと左のタッチを柔らかく、呼吸が揃ってない。

宮野、、お前、どういう気持ちで弾いている??

男を求める肉食な気持ちになっているか?

今のお前はただ音を鳴らしているだけで何の気持ちも入っていない。お前の演奏からはただの音の羅列にしか聞こえない。お前は何の気持ちで演奏を弾いてる??」


「それは、もっと指の力を抜いて、レガートを意識したり、ペダルに頼りすぎちゃって音が濁っちゃっているとかですか?先生。。」


千夏はピアノ講師である米澤亮平のレッスンを受けていた。米澤は桐朋音楽大学や東京芸大、東京音大でも講師を務めるピアニストとして相当の腕前を持つ名講師であった。そんな米澤の言う意見は千夏にとって正確で音楽家としての人生を歩んできたからこそ言える台詞であった。


「違う。お前の音はホールを意識した音作りじゃないって事だ。コンチェルトを弾く時はどんな時でもお客様に届ける音を作んなきゃならねえ。ホールの前列にいるお客様にも2階席にいるお客様にも、奥のお客様にもだ。今度お前が出る声楽演奏会は確かにオペラに比べれば小さい演奏会だけどな。

ホールでやる演奏会って事を忘れちゃならねえ。

ピアノは声楽に比べて音が籠りやすいだろ。

2階席の奥に座っているお客様なんかピアノの音すら聞こえない可能性だってある。じゃあどうすれば音を出せるようになるか。その答えはただ一つ。手の使い方だ。フィンガリング自体に問題はない。指使いも正確。楽譜通りには弾けている。ただ出来ていないのは指先から音を鳴らすと言うことだよ。第1関節から第2間節にかけて全く脱力ができていない。

脱力っていうのはピアノ奏法の基本だ。お前は普段から脱力を行なっているか?正直に言ってみな。その脱力ができていない事によって指の先に無駄な力が入ってしまっている。

無駄な力によって音が無機質なものになってしまっているんだ。だからしっかり脱力をしてもう1回第18小節目から。」


「はい。」


黙って米澤の意見を聞くと千夏はピアノを演奏してゆく。彼女の演奏している曲はチャイコフスキー、ピアノ協奏曲第1番。そう。ピアニストにとって最大の難曲の一つであると同時に人気曲でもある。千夏はこの曲の持つ不思議な雰囲気に惹き込まれた。聴く人を圧倒する序奏。誰もが聴いたことのあるあの旋律はあたかもまた曲の中に出てくるのではないかと思わせる。しかし2度と再現されない。失われた時間と同じように。そして第一楽章から感じるのは憂鬱な感情だった。


「宮野は心の中でとても落ち込んだりする時があるか?

ただ時間が経てばその事を忘れて立ち直るだろう。この曲も全く同じなんだよ。曲の中に落ち込む場面が存在してそしてそれが感情の山となって爆発する。そして立ち直って明へと戻ってゆく。たかが20分の第一楽章の中に人間の感情の全てが入っているのさ。だが第2番はどうだろうか?」


「あの曲は超絶技巧をひたすら詰め込んだ明るい曲。

第1番とは対照的です。第2番の1楽章も大好きです。

でもチャイコフスキーにとって挫折したからこそ第2番の存在が浮き彫りになったんではないでしょうか?私はチャイコフスキーを弾いても腱鞘炎にしかならないんです。今までそんな演奏しか出来なかった。自分がただ只管。。。」


そんなレッスンで言われた事を思い出しながら家路に着くのであった。家の中の前に着くと玄関を見つめる。見覚えのない靴がある。ゆりのだろうか。いや違う。男のだ。まさか、途端に千夏は焦った。何も聴いていない。ゆりにまさか彼氏ができたのだろうか。そういえば最近なんかやけに明るい。

ニヤニヤしている事が多くなった。


(まさか、ゆりの彼氏??イケメン??

それともかっこよくない男なの??どうなんだろう??

あいつ、私に全然知らせねーじゃんかよ。くそあいつ惚気やがって。)


千夏は恐る恐る家に入ってゆく。


読んで頂きありがとうございます。

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