第16話 ラノベ展
(ごめん、今、国際展示場!!!)
ゆりかもめの中で理央からのLINEの着信が来ると真っ先に見ていた。
俺は、この日を心待ちにしていた。なぜなら人生で初めて、デートする日だからである。
俺は、宮野ゆりが好きだとは絶対言えなかったけど、理央ちゃんだって悪くない。高校生なら本命とデートできなくたっていい、そう思っていた。
でもこの事は彼女に伝えてはならない。趣味も同じ、思ってる事も一緒。何かの繋がりを感じた。
国際展示場、そう毎年楽しみにしているコミケの開催地だ。冬コミにはお気に入りの作家、海堂智也先生著の新刊を楽しみにしている。しかし今日行くのはそこでは無い。お台場で開催される、ラノベ展である。お台場は昔から好きな場所だった。フジテレビの湾岸スタジオや、レインボーブリッジなど何度来たことか。と言うよりこの地域に来ることが自分にとっての癒しなのだ。
「あー、俺もなんかコミケに出したいな!!女子高に入学した男子高校生の話って俺自身の話、ネタにしても面白くねえか!」
ふと独り言を言った。ついつい出てしまう。
「ごめん、お待たせ!!」
「理央ちゃん、髪型変えた?
しかも、髪の色が銀髪になってる!!」
彼女のコーデは中々オシャレだった。銀色に染った髪に、白のカーディガン、オシャレな白スカートを着ている。
「そうなの、ブラザーラバーズのメインヒロインの同じ髪型!!似合うでしょ!か弱い妹の色銀色だよーーー!!!」
「あー、やっぱりそれか!!!どうりで似てると思ったんだ!!!」
「今日は、案内してね、お兄ちゃん!!!!」
まるで、エロゲーのヒロインのような声で!!!
「ちょっと待てよ、お兄ちゃんはやめろよ!!ほんとに兄妹って思われるだろ!!!」
俺は恥ずかしながら言った。
「いいじゃない!!ブラザーラバーズではね、お兄ちゃんと人目を気にしないでデートするのよ!!!それもホントのカップルみたいに!!」
「どこ行く??」
「今日はね、あたしが行きたいのはね、ラノベ展よ!!新人賞を総ナメにした、有名なラノベ作家の作品が展示されているの、私の好きなエロゲ作家さんの作品もあるのよ!!!」
そうお台場に来たのは、ラノベ展に行くためだった。ラノベそれは、漫画の小説版。基本的に、アニメ化の登竜門と言ってもいい。ただ純文学と違うのは、基本的にファンタジーが多いこと。だからエロいのだって、有り得ない恋愛だってある。
会場へ到着した。あーこの感じ冬コミ思い出すなー。新刊を買うために始発組へダッシュして買いに行ったっけ。
「見つけた!!ゆめる先生の、お兄ちゃんのソーセージ頂きます!!!ねぇ、田口くんが好きそうなやつだよ、」
それはエロ同人誌だった。
それを見て、俺は一瞬引きそうになった。
「いや、ちょっと待てよ、おいおいおい、何やねんこのタイトル、こりゃあかん卑猥だぞ!!!やめろ俺にだって妹いるんだぞ!!!俺に兄妹物は進めるな!!」
「本当は欲しいんでしょ。こういうの。顔に出てるよ。恋するフュージョンシスターズとかね、ラブラブディアシスターとか、中々いいんだなー、こういうの、」
「と、とにかく俺は普通の小説が好きなんだよ。そんな卑猥なものは、NG、な。」
「あっ興奮してる??もう可愛いんだから、あー、これ欲しかったの。『転生したら賢者になりました』。」
「今流行りのなろう系か。転生物はいいよな
俺も実は1番オーソドックスで好きなんだよな。」
俺は展示されている本の表紙を眺めた。
「なろう系ね、あたしの友達にね、凄くなろう系書いてる人がいるのよ、その人のこと今度紹介してあげようか?」
「ねぇ、やっぱり凄いよねー。美玖ちゃん。2人で出したラノベかここまでヒットするなんてね!」
「いやいや、雪ちゃんが頑張ってシナリオ考えてくれて、あたしが挿絵とか、頑張って書いたからさー!!」
2人の女子の声が聞こえた。
するとその2人の声に聞き覚えがあったのか理央は突然驚いて声を上げた。
「雪ちゃんと、美紅ちゃんじゃん!!!久しぶり!!
」
「理央ちゃん!!!久しぶり、元気だったー???」
3人は、その場で駆け寄り、ハイタッチを交わしていく。JKあるあるの再会トーク。3人は凄いキラキラ盛り上がっている。俺は少し恥ずかしい気分になった。
「理央ちゃん、有栖川なんだー、凄い。学校楽しい??」
雪と呼ばれていた、赤い髪のショートヘアの女の子は、理央ちゃんに近況を質問する。
「うん、凄い楽しいよ。あっ紹介するね、あたしの高校の同級生の田口圭一君。」
突然、俺に話を降ってきた。俺は一瞬躊躇ったけど、口にする。
「田口です。初めまして!」
「あたし、理央ちゃんの中学の同級生の竹山雪です。」
「あたしは、一条美紅です。あたし達、ラノベ作家なんです。」
ラノベ作家。スゲエ、高校生にしては既にそんなの書いているのか。俺は、どんなジャンルを書いているのですかと聴きたくなったが、さすがにそれは聞けなかった。
「田口くんね、あたしの守り人なんだよ。あたしのことを守ってくれるの。」
理央は、そう口にする。そうあの日不良に殴られた彼女を守った事から全てが始まり、今二人でこうしてお台場デートをしている。
「よせって、俺そんなんじゃないから」
雪ちゃんと呼ばれた子は、主にシナリオを担当しているらしい。ジャンルはどうやらラブコメとちょっとしたファンタジーを描いているらしい。あとは、美玖ちゃんは、挿絵や表紙絵を担当しているみたいなのだ。
「ごめんね、なんか二人がデートしちゃってるとこ邪魔しちゃったね。」
「じゃあね。」
美玖ちゃんと、雪ちゃんの二人の背中を俺は見送った。
「あたしね、いつか小説書きたいって思ってるの。その時、美玖ちゃんに挿絵とかイラスト描いてもらってさ、そしてコミケに出すのが夢なの。」
理央は、二人を見送ったあとボソッと夢を口にした。初めて話したときから思っていたが彼女はとにかく夢がある。ネガティブという感情が見当たらない程だ。
「へぇ、いっぱい夢があるんだな。俺なんて、なんもねえや、ただなんとなく今を生きているだけ」
俺は少しネガティブ思考になった。
「ダメよ、ネガティブ禁止。ポジティブに生きなきゃ。」
理央の言葉は、なんか俺の心を勇気づけてくれた。




