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第14話 理央のピアノ


理央の部屋と言ってもその部屋は寝室ではなかった。グランドピアノが置かれ防音室になっていた。そしてトロフィーがいくつも置かれていた。俺はそのおびただしい数のトロフィーの数に驚いた。


「私の唯一の趣味なの。このピアノ。初めてなんだ、友達に聞かせるの。何かリクエストを教えて欲しいわ。」


「俺も実はクラシック好きなんだよ。例えばラフマニノフのピアノ協奏曲2番とか、3番とか、後、革命とかも。」


「随分色々知っているのね。私はね、ショパンのバラード1番が好きよ。後、スケルツォ4番って曲も聞かせてあげる。」


俺は驚いた。バラード1番は、誰でも知っている名曲だ。その曲は分かるがスケルツォの4番を聞かせるなんて、あの曲は一般受けしないことで有名なのに、確かに晩年のショパンらしい素晴らしい曲だが。

バラード1番の独創的な序奏が始まった。ト短調なのに変イ長調で始まる独特和音。

これはナポリの六度と呼ばれている和音。

確かに俺もピアノを習っていたので、これくらいは分かるが。

彼女の音色は何もかもが違った。冒頭からの音の芯の太さが違う。男性的な力強い音で俺の心を魅了していく。

そして、迫力のある、中間部、ワルツ風の箇所を次々と弾きこなした。最後のプレストコンフォーコ、嵐のように吹き荒れる怒涛のコーダも弾きこなしている。


「すげぇ、かっこいいよ。」


思わず拍手がでてしまった。それはそうだろう。生のバラ1は、迫力が違う。

続いてスケルツォの4番を弾いた。4つのスケルツォの中で唯一の長調の作品で、そのスケールの大きさから最も難しいとされているスケルツォ。ショパンの人生の全てを感じる傑作である。

しかしこんなに大人の曲をわずか高校1年の女子が弾きこなしている。


「このスケルツォはね、他のと比べてすごい明るいの。何もかも超越した感じ。」


「確かに、ええ曲だよな。しかしこの曲を選んだ理由がわかんないな?」


「ホ長調は恋の調。ロマンチックだからよ。ショパンの恋心を感じたの。絶望よりも深い愛よ。」

理央はショパンへの愛を募らせていた。

「あのーそれ、ここで言うこと。ロマンチックっていうか、古くね?」


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