表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
6/39

#6 マッチ売りの妖女

 白雪を加えた一行6人が雪道を進むと人影が見えてきた。

「白雪、あれか? 」

「いえ。エルレーンは、もっと品のある女性だったわ。」

 勇斗の質問に白雪が答えると、その人影が歩み寄ってきた。

「おいおい、聞こえるように人を下品扱いしないでもらえるかな? 」

「それは悪かったわ。なにしろ、この人数なので小声では、皆に聞こえないものだから。」

「あぁ、それじゃ仕方ないか… ってなるかぁっ! てか、そこじゃなぁいっ! 」

 その女性は白雪を怒鳴り付けたが、白雪の方は一向に気にしていない様子だった。

「悪いが、急いでいる。この辺りでエルレーンという女性を見かけなかったか? 」

「えっ、えっ、何っ!? あんたら幽霊の知り合い!? 」

「なるほど、エルレーンは幽霊なのね。なら、貴女に聞きたいのだけれど、このフロアを抜け出すのに必要な情報を持っていないかしら? 」

 驚きの声をあげた女性に、白雪は淡々と質問をした。

「あんたねぇ、人を下品扱いするは、こっちからの質問には答えないわ、何様!? 」

「私はただの一般人。そうね、何様というなら、そこの人は王族らしいわ。もっとも、私はこの世界の人間ではないので、どうでもいいのだけれど。」

「えっ、ひょっとして異世界人? 召還成功!? 」

「なるほど、勇斗以外に召還者が居るのは、おかしいと思っていたが、召還師はお主か。という事は妖女じゃな? 名を何という? 」

「この女も女なら、あんたもあんただ。王族だか何だか知らないが、人に名前を聞くなら、まず自分が名乗るのが筋ってもんじゃないの? 」

「それもそうじゃの。妾はリリス=フェーじゃ。」

「フェー? あの貧乏貴族の!? ははぁん、さては七宝を集めて王族での立場を上げようってんだね。」

「よ、余計な事は言わんでよい。それより、そなたの名は? 」

「あたしはアンナ=マリア。」

「このような所で何をしておる? 」

「えっ!? あ、そうだ。マッチ。マッチ買っておくれよ。」

 思わず勇斗と白雪は顔を見合わせた。ガス台は捻れば火は着くし、キャンプでも着火はライターだ。都会の生活でマッチは殆ど見掛ける事はない。それに、魔法が存在する世界なら火くらい、簡単に着きそうなものだ。と、そこまで考えてから、ふと疑問が湧いた。

「そもそも、この世界に魔法は在るのか? 」

「あぁ、余所の世界から来たから知らないか。あたしが、魔法を使える職業、妖女だ。」

「妖女… 魔女とは違うの? 」

 勇斗の問いに答えたアンナに、今度は白雪が尋ねた。

「次から次に面倒臭いねぇ。あとはマッチ、買ってくれてら、いくらでも答えてやるよ。」

「リリス、買ってやれ。」

「何故、妾が!? 」

 不意に振られてリリスは動揺していた。

「俺や白雪は、この世界の通貨を持っていない。貧乏貴族でも、王族の端くれなら、マッチくらい買えるだろ? 」

 リリスはどうやら、アンナの所為で勇斗からの扱いが一段と悪くなった気がした。ここでマッチを買わねば、この先も貧乏貴族扱いされかねない。ここまで集めた七宝を、どれ一つ所有していないリリスとしては、少なくとも迷宮を脱出するまで、勇斗たちと行動を共にしなくてはならない都合上、これ以上の扱いの悪化は避けたかった。

「えぇい、手持ちのマッチを全部、買い上げてやる。その代わり、情報に嘘、偽り有らば、只ではおかぬぞ。」

「いやぁ、助かった。この雪の中、火の起こせない連中にマッチ売れば儲かると思ったら、誰一人通りゃしない。たまに現れるのが幽霊じゃ商売にならなくてさ。えぇっと、エルレーンなら二、三日に一度、現れるよ。このフロアを抜け出すならサスカッチを倒すしかないね。建物の中に雪が降るのも、奴の所為だ。居場所はエルレーンに聞いとくれ。あと妖女と魔女の違いだっけ? 」

「いや、それはどうでもいい。」

「ちょいちょいっ! どうでも良くないって。一緒にされたくないんだけどな。」

「そちらの御仁は、わたくしが参ったので、貴女の用は済まれたそうですよ? 」

 声のした方をアンナが向くと、そこにはエルレーンが立って… いや、浮いていた。

「そっちが良くても、こっちが嫌なのっ! 」

「時間の無駄だ。せめてもの礼として忠告してやる。この迷宮の中で七宝の半数以上が俺たちの手元に在る。だから、マッチを買うような奴は来ないだろう。それに、もし人が来ても、サスカッチは俺たちが倒すから、さっきの情報は取り引きにならない。それじゃぁな。」

「えっ!? ちょっと待ってよ。何、それ? それじゃ、この先、あたしはぼっち? やめてよ? 冗談でしょ? こんな雪の中で一人年老いていくなんて御免だわ。あたしも連れて行きなさいよ。いや、連れて行って。いえ、連れて行ってください。きっと、あたしの魔法がお役に立てる筈です。御願いします。ご主人様ぁ~っ! 」

「誰が貧乏貴族じゃ… 痛っ。」

 急に腰の低くなったアンナに、リリスが上から目線で強気に出ようとして、勇斗に小突かれた。

「お前は話しを長引かせるな。アンナ、サスカッチとの戦いで様子を見させてもらう。役に立たなそうなら、置いていくからな。」

 勇斗の言葉にアンナは瞳を輝かせた。

「さっすが、ご主人様っ! 必ずや、ご主人様の期待に沿ってみせまするっ! 」

 アンナは勇斗に頭を下げながら、リリスに向かって舌を出していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ