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男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
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#39 虚空の迷宮

 勇斗が気づいたのは自分の部屋の中だった。

「無事に帰ってきた… のか? それとも夢? 」

 自問自答。

「そうだ、白雪っ! 」

 勇斗は白雪にスマホからメッセージを送った。返信はすぐに来た。

【夢じゃないよね?】

 どうやら白雪も同じ不安に刈られたようだった。二人は待ち合わせ場所を決め駆けつけると白雪に真魚もついて来ていた。

「何で真魚まで? 」

「だから、元の世界に戻ったら、絶対に下の名前で呼ぶなって言ったろっ! 」

 やはり真魚も向こうの世界を覚えている。夢ではなさそうだと勇斗と白雪も思った。

「で、これからどうするの? 」

 真魚の質問に勇斗と白雪は不思議そうに顔を見合わせた。

「元の世界に帰ってきたんだ。どうせ誰も信じないし七宝も無いんだから元の生活に戻るだけだろ? 」

「うんうん。」

 勇斗が答えると白雪も同調した。

「げぇ。二人とも鈍すぎ。あちきが聞いてんのは、あんたらの事ぉ。」

 すると再び勇斗と白雪は顔を見合わせた。違いと言えば白雪の頬が少し赤いくらいか。真魚が白雪の背中を押すと、二、三歩前に出た白雪が右手を出して頭を下げた。

「よ、よ、宜しくお願いしますっ! 」

「ちょっと待ったぁっ! 」

 間髪入れず声がして、一人の少女が走ってきた。

「い、一年、有栖川 碧。宜しくお願いしますっ! 」

 今度は勇斗と真魚が顔を見合わせた。

「… アリスっち… よね? 」

「アリス… だよな? 」

「あ、気づいて貰えました? 服装も名前も違うから気づいて貰えないんじゃないかって不安だったんです。」

 白雪も顔を上げた。

「一番、変わったのは… 性格… かな? 」

「ローズさんに背中押されて時の扉に飛び込む時に決めたんです。今度は自分に正直にしようって。」

 白雪が頭を抱えると、そのポーチの中から何やら聞こえて来た。

「スマホはマナーにしてきたんだけど… 」

 音の原因に気づくと、更に白雪の表情が曇っていった。

「姫ちゃん、どうしたん? 」

 真魚に問われると白雪はポーチの中からリップミラーを取り出した。

「気づいたなら開きませんか? というか、どうして、こんな小さな鏡? コンパクトとか手鏡とか無いんですか? 」

 鏡を開かないものだから多少声が籠ってはいるが、間違いなく桃の声だった。仕方なく白雪が開くと小さな像が現れた。

「やりました、勇斗様。鏡の中は繋がってました♪ 」

「でも、宝鏡スペクルムじゃないから出入りは出来ないんでしょ? 」

「はぅあ!? しまったぁ。そこまで考えてませんでしたぁ。」

 桃は嘆いているが、白雪は少しホッとしていた。

「そっかぁ。出てこれないんなら対象外だねぇ。それじゃ、あらためて月見里やまなし、白雪姫とアリス、どっちと付き合うの? 」

「お待ちいただけますか? 」

 そこには赤いフレームの眼鏡を掛けた少女が立っていた。

「どちらさん? 」

 真魚が首を傾げながら尋ねた。

「マスターの隣を頂戴しに伺いました。」

「マスターって… コッペリア!? 」

「こちらの世界では古都辺 莉愛と名乗らせて頂いております。」

「コッペリア、その眼鏡は? 」

「マスター、莉愛とお呼びください。こちらの世界に来る時に焦点距離に不具合が生じたものですから。」

「聞くとこ、そこかぁいっ! 」

 さすがに真魚が突っ込んだ。

「人間… よね? 」

 白雪が冷静に尋ねた。

「はい。人と成ったからにはマスターとの関係性を再考すべきと考えます。結果、マスターの隣がベストと判断しました。」

「おい、こら、勇斗っ! 莉愛ちゃん選ぶなよぉっ! あ、やべ。」

「ハーメルン様ぁ~ 」

 男の声がしたかと思ったら黄色い声に追われて何処かに行ってしまった。名前を呼ばれていたので確認するまでもない。

「… あいつは、まんまだな。」

 勇斗の言うとおり、ハーメルンは見た目も名前も変わっていないようだ。

「こちらの世界の女子からは不思議と好意を寄せられているようなので、私の事は諦めてくれるとよいのですが。」

 確かにハーメルンの外見は悪くない。

「では莉愛さんは勇斗さんを諦めますか? 」

 不意なアリスの問いにコッペリアは頬に人差し指を当てて考えた。

「なるほど。マスターを諦める選択はありませんね。」

「そのマスターはやめないか? せっかく人間になったんだ。勇斗でいい。」

「では、は、や、と。」

 急に甘えた声を出したものだから真魚が転けそうになる。

「どこで覚えたん!? 」

「こちらのアニメ、ゲームというものから殿方のウケが良いと学習しました。」

「はぁい、そこまでっ! 不純異性交遊は杏菜先生が許しませんよっ! 」

「不純って… アンナ、お前もか。」

 勇斗の呆れたような視線の先には白衣姿のアンナが居た。

「やっぱ、ご主人の居る所は地の果てでもお供するって決めたから。」

「それは、あの世界で、だろ? こっちじゃ妖術も使えないだろ? 」

「細かい事は言いっこなし、なし。今度は化学の力でお役に立っちゃいますから。」

 せっかく頑張って告ったのに、うやむやになって白雪は肩を落とす… かと思われたが、逆に燃えていた。

「こうなったら、絶対に負けないから。」


 私立『皐月宮さつきのみや学園』。人はこの学園を皐月(May)きゅうと呼ぶ。

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