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男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
29/39

#29 謎解き迷人

 城に乗り込んだ一行を待っていたのは入り組んだ迷路だった。

「勝手に城内を弄ってくれたものだ。」

 溜め息を吐いたジークだったが、よく見ると藁と木の板で作られていて城を改造した訳ではなさそうだった。

「燃やしてしまうか。」

 ハーメルンが宝笛パイドを構えると、コッペリアがそれを取り上げた。

「ここは城内です。放火するつもりですか? 減点です。」

 一応、パイドは返却されたがハーメルンはすごすごと下がった。

「さてと。コッペリア、手分けするのと纏まっていくのはどっちがいいと思う? 」

「七宝の能力を分散するのは得策ではないと考えられます。」

「わかった。纏まって行こう。」

 勇斗が即決した様子にウーラーは少し驚いた。

「あんた、信頼されてんだな。」

「機械人形は感情に左右されませんから、冷静な判断を行えます。マスターの信頼にお応えするのは義務と心得ています。」

「いや、あの人はあんたを人形扱いしてないと思うよ。」

「はい。マスターは私を仲間と言ってくださいます。」

 何かに納得したようにウーラーは頷いた。

「あの魔女には、とてもじゃないが言えないだろうな。ついてきな。」

 ウーラーは通路途中の藁を掻き分け木の板を外した。

「抜け道かえ? 」

 予想外の場所に道が開けた事にリリスが尋ねた。

「いや、この迷路そのものがフェイクなんだ。この迷路通りに進もうとすると出られない。入り口はあっても出口は無い。先へ進むには、こうして壁を開いて進むんだ。ただし、トラップもあるから… 」

「うわっ。」

 突然、ハーメルンの声がした。

「… ああいう事になる。」

 怪我は無さそうだがハーメルンが転げていた。

「そういうのは早く言ってくれよな。」

「罠に掛かった時点で減点。愚痴を言った時点で更に減点です。」

 もう勇斗たちもハーメルンが肩を落とすのを見慣れてきた。

「ウーラー。先に行ってくれ。こっちはついていく。」

 ウーラーは頷くと、どんどん先に進んでいたが、突然立ち止まった。

「ウーラー!? 何故、元の姿に? 」

「本物だろうな? 」

 そこにはブーマーとフーマーが待ち構えていた。

「もちろんだ。もう兄者たちも魔女の言うことなんか聞かなくても元に戻れるんだ。」

 ブーマーもフーマーも疑心暗鬼に刈られて訝しそうにウーラーの姿を見ていた。

「ふぅ。面倒臭いったらありゃしない。」

 ラフィネスクは一歩前に歩み出ると指をパチンと鳴らした。

「えっ!? 兄者? 」

「な… フーマー!? 」

 突然、元の姿に戻ったお互いにの姿に二人は呆然としていた。

「なんかフツー。」

「やっぱフツー。」

「揃ってフツー。」

 勇斗には予想通りの声が女性陣から飛んだ。

「なっ… 」

 反論しようとしたブーマーとフーマーだったが、ウーラーが制止した。

「兄者たち。オークの姿と普通の人間の姿とどっちがいいのさ? 」

「そ、そりゃ普通の方が… 」

 その時だった。一同の背筋に悪寒が走ったのは。

「何者だい。人様の魔法を簡単に解いてくれたのは? フツーの魔法使いじゃなさそうだね? 」

 さすがにリリスもハーメルンも、この空気では悪乗り出来なかった。

「人様にものを尋ねるなら姿くらい現したらどうなんだい? 」

 ラフィネスクに言われて奥から人影が現れた。

「くらいなっ! 」

 隙を突いたつもりで魔法を放った魔女だったが、白雪が一瞬早く宝鏡スペクルム翳した。魔女の姿は消え、残されたローブの下から一匹の蛙が出てきた。

「最初に元に戻せるラフィネスクを狙うなんて見え見えでしょ。」

 白雪にそう言われても魔女はケロケロとしか返せない。兄弟をオークマジシャンに変えた時と違って詠唱が出来ないようにフツーの蛙に変えようとしたらしい。

「ジーク、どうする? 」

「色々と不明な事が残ってはしまったけれど、これ以上悪さが出来ないのならいいかな。」

 すると蛙が激しくケロケロと鳴く。抗議なのか、懇願なのか、ひたすら鳴いている。

「まぁ魔法を掛けた本人がケロケロとしか鳴けないなら、このゴーテル・ラフィネスク級の魔法使いしか戻せないだろうね。」

 その名を聞いてジークがポンと手を打った。

「どうりで。あの名高き宮廷魔法使いのゴーテル様でしたか。長らく行方不明と伺っておりましたが、リリスと一緒に居らしたとは。」

「いや、居たのは塔の中。まぁ、その、色々とあってね。」

 さすがに敬意を示すジークに、若返り魔法の為にカンパニュラ王子の妻ラプンツェルを軟禁していたとは言いづらかったようだ。

「ここに残っていただく訳には… 」

 高名なる宮廷魔法使いを抱える事はジークにとっても王族の中で立場をよくする。ましてや貧乏貴族と揶揄されるリリスよりは良い待遇も用意出来る。ある意味、win-winなのだかラフィネスクは首を横に振った。

「なかなか魅力的な話しだけど、一緒に居るのはリリスなんかの為じゃない。勇斗とこのの為だからね。この旅が終わった時に、まだあんたにその気があったら考えさせて貰うよ。」

 ラフィネスクはコッペリアの肩を抱き寄せた。なんか扱いをされたリリスは文句を言おうとしたがハーメルンに羽交い締めにされていた。

「では、旅の無事な終わりをお待ちしています。海への道はこの地図をお使いください。この城の物ですから、かなり正確ですよ。」

「ありがたく使わせて貰うよ。」

 勇斗たちは地図を受け取ると城後にした。この日は忘れられた蛙がいつまでも鳴き続けてたという。


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