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男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
25/39

#25 薄氷の湖

「それで、この帷子をどうするんだい? 」

 勇斗に、そう問われてもエリザは声に出して答える訳にはいかない。エリザは11着の帷子を抱えると一礼をして外に走り出した。

「この、うつけ… 」

 リリスは勇斗にうつけ者と言いかけて、一斉に女性陣の視線を浴びて止めた。

「コホン。桃の女王が11人の兄の呪いを解く為と申していたであろう。帷子とは纏う物。それを11着用意したとなれば、その兄たちまちに着せるに決まっておろう? 」

「だが、この村に着いてから人影はエリザしか見かけていないぞ? 」

「それは… 」

 勇斗の質問にリリスが答えようとしたところでコッペリアが割って入った。

「それはエリザのお兄様たちが人間以外のものに姿を変えられていると推測されます。」

「ぬぬっ。」

 憤るリリスをアリスと白雪が宥めていた。

「また、帷子という形状から腕、もしくは翼が一対であると想定されます。」

「つまり、鳥か獣か。ちょっとイルカが居るような場所には見えないからな。」

「イル…カ ? 」

 どうやらコッペリアの中にイルカについて記録が無いらしい。そもそも、この世界にイルカが居るかも分からないし、居たとしてもイルカと呼称されているかも分からない。

「海洋哺乳類の一種よ。イルカに限らず海洋哺乳類は腕がヒレに進化したから帷子が着られるかもしれない。まぁ、爬虫類でも着れなくはないでしょうけどね。」

 白雪の説明を聞いたコッペリアは勇斗の顔を覗き込んだ。勇斗が頷くと、やっと納得したようだ。

「ふぅ… 。私だって仲間なんだから、いちいち勇斗に確認取らなくてもいいんじゃない? 」

「白雪さんは仲間と認識しています。でもマスターではありません。」

「いいじゃん。俺様たち、仲間って認識されてるんなら。」

 少し不機嫌そうな白雪の前にハーメルンが割って入った。

「… ハーメルンが仲間かは要検討、先送り事項とします。」

「そんなぁ。」

 もう、ここまでくるとネタである。

「とりあえず、エリザの後、追った方が良くない? 」

 いつものように眠そうなローズだったが、エリザの事は心配らしかった。後を追うとエリザは帷子を抱えて湖畔に立っていた。

「エリ… 」

 声を掛けようとしたペロをメイジーが止めた。見ていると薄い氷の張る湖に1羽、また1羽と白鳥が舞い降りてきた。そして11羽目の白鳥が舞い降りた時、エリザは蕁の帷子を思いっ切り投げ上げた。すると次々に白鳥は人の姿になっていった。中で1羽だけ上手に帷子を着れなかった白鳥もエリザが羽を通してやると、やっと人の姿になる事が出来た。

「ふぅ、焦ったよ。なんか、僕の分だけ、目が詰まっていたみたいで。」

 その言葉を聞いた瞬間に皆の視線をハーメルンが集めたのは言うまでもない。

「これで、やっと声が出せます。ありがとうございました。」

 エリザが深々と頭を下げると、後ろの兄たちも頭を下げた。そして中で一番歳上そうな男性が歩みでた。

「意外な所で会ったな、リリス・フェー。」

「お主、ジークか? 5番目の弟が産まれたまでは聞いておったが、まさか12人兄妹とは驚いたぞ。」

 やはりエリザが姫というだけあって王族らしい。一度、エリザの小屋に戻って話を聞く事にした。

「改めて世話になったな、リリス。」

 ジークがリリスに礼を言うとコッペリアが立ち上がった。

「訂正させていただきます。リリスは帷子も編まず、食事も作らず、今回の件においては、ハーメルンより貢献していません。この一行の代表は我がマスター、勇斗様になります。」

 これにはリリスに反論の余地は無かった。

「そうか。それはすまなかった。… 君は機械人形か? 」

「はい。今は亡きコッペリウス博士に造られた機械人形、コッペリアと申します。現在は勇斗様をマスターとし、魔女ラフィネスク様より魔力供給を受けて活動しております。」

 そう言って一礼したコッペリアをジークはまじまじと見ていた。

「おいおい、コッペリアちゃんに変な気起こすなよ? 」

 思わず立ち上がりかけたハーメルンをアンナが制した。

「これは失礼した。高名なコッペリウス博士の作と聞いて、ついな。だが、塔の魔女ラフィネスク殿については、あまり口外しない方がいいだろう。その方がラフィネスク殿も良いのではないかな? 」

「そうだね。色々、塔の外でもやらかしてきたしね。」

「承知致しました。魔力供給源を秘匿案件と致します。」

 コッペリアが席に着いたところで勇斗が口を開いた。

「それで、今回の経緯について説明して貰えないか? 俺たちは海に出たいんだが、事情によっては手を貸そう。」

「しかし… エリザを手伝って貰っただけで充分です。相手は悪質な魔法使いが、それも三人。城を迷宮に変えて住み着いています。とてもではないが… 」

「なぁに、心配は無用じゃ。妾… この者たちは、あの塔の迷宮を攻略し、七宝を手に入れた強者よ。魔法使いの三人くらい、退治してくれようぞっ! 」

 いつもであれば面倒を嫌うリリスだが、相手が王族となると話しは違うらしい。フェー家より格上の王族には恩を売っておいて損は無いと踏んだのである。

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