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男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
23/39

#23 桃

「勇斗、待ってよぉ。一緒に還る方法、探そ。」

 白雪も装う事に疲れたのか、素を隠さなかった。

「魔法使いは居た方が何かと便利だぞ。」

 ラフィネスクが視線をコッペリアに向けると嬉しそうに頷いた。

「マスター。塔の外について未知な点も多く、魔法使いと私の同行を推奨します。」

「コッペリアちゃんが行くなら俺様も行くしかないな。」

 当たり前のようにハーメルンが後に続いた。

「わ、私も一緒に苗木を植えられる場所探します。」

 何かを感じたのだろう。ドリアードの話しは、していないがアリスも続いた。

「僕はカラバ家に帰る途中まで、御一緒するにゃっ! 」

「わたしも家に帰るまで、御一緒します。」

 ペロとメイジーも続いた。

「じゃぁ、ついでについてきますねぇ。行くあて無いしぃ。」

 ローズも続く。

「あたしも行くわよ。ご主人様が、この世界に居る限り地の果てだってお供します。」

 アンナも続く。

「わ、妾もゆくぞ。王族として召喚しっぱなしのような無責任は出来ぬからな。」

 リリスの本音は、このままでは七宝が手元に一つも残らない。勇斗たちが還ってから一つでも多く七宝を手に入れたい、そんな処だろう。

「なんだ、結局塔の中と変わらないな。」

 勇斗が呆れていると、白雪の宝鏡スペクルムがカタカタと鳴り出した。またチェシャだろうと白雪が取り出すとホログラムのように桃の女王の姿が浮かび上がった。

「ふぅ、あの猫が出られて私が映像だけなんて理不尽な… あ、勇斗様っ! お初に御目に掛かります。赤の女王と白の女王が力を合わせて生まれた桃の女王と申します。桃とお呼びください。」

 一瞬、勇斗は何事かと思った。赤の女王と白の女王と云えば結婚を迫られた記憶が強い。だが桃の女王は、まだ子供のようだ。さすがにそれはないだろうと思った。

「それで、何か用か? 」

「はい。この先の海の向こうの島に時間銀行の本店が在ります。」

「時間銀行? 」

 桃の言葉に唐突感が否めない。

「はい。銀行とは名ばかり。預かると言って人々の時間を盗んでいるのです。」

「鏡の国に居て、よく知っているな? 」

「世界中の鏡に映るものの情報は手に入りますから。そして、その時間銀行本店に勇斗様の世界と繋がる手掛かりがあるかもしれません。」

 少々、口幅ったい言い方が勇斗には気になった。

「なんか曖昧な情報だな? 」

「鏡は隠れた物や音は映らないものですから。ただ、異世界と繋がるような物がありそうだとの知らせがありました。その異世界が勇斗様の世界かどうかまでは不明なのですが。」

 まるで雲を掴むような話ではある。しかし、他にまったくアテが無いのも事実だ。

「とりあえず行ってみる。何か情報が入ったら知らせてくれ。」

「承知しました、勇斗様。くれぐれも灰色の男には気をつけてください。時間銀行の行員です。」

 それだけ伝えると勇斗の役に立てたのが嬉しかったか、嬉々とした桃の姿の映像が消えた。

「誰か島までの道順、分かるか? 」

 勇斗の言葉に皆は顔を見合わせたが、応えはない。コッペリアでさえ、塔の外については情報不足のようだった。

「悩んでも仕方あるまい。桃の女王が言っていた“この先の海”まで行ってみれば何か知っている者が居るかもしれぬ。」

 ここはリリスの提案に乗るしかないようだった。

「海の方角は? 」

「ん~、あっちぃ。」

 勇斗の問いにローズが答えた。

「確かかえ? 」

「海も水には違い無いからねぇ。ふぁ~。」

 リリスの疑問にローズは大欠伸をしながら答えた。

「どうやら、アリスとローズが頼りみたいだな。」

「はいっ! 」

「僕も居るし、なんとかなるにゃっ! 」

 ローズに水が分かるなら、アリスには風が分かるだろう。そしてペロの宝靴ラテールの属性は地だ。

「それじゃ、出発するぞ。」

「ちょっと待った。」

 一行をライムが呼び止めた。

「餞別だよ。持って行きな。」

 そう言ってライムは巻いた紙を取り出すと、受け取ろうとしたリリスを躱して勇斗に渡した。

「こいつは? 」

「大盗賊ラウム・クロウの残した島の地図と銀行の見取り図。島までは分からないけど、島に着いたら役に立つだろ? 」

「それって、親父の形見じゃないか。」

「あたいが持ってても、ただの紙切れだからね。それに、あんたは命の恩人だ。遠慮は要らないよ。」

「ありがとう。助かるよ。」

 勇斗は受け取ると大切にしまった。

「皆さんには妻と息子が世話になった。道中、役に立つと思う。」

 そう言ってカンパニュラ王子は金属札を勇斗に手渡した。

「それがあれば、国内なら便宜を図って貰えるだろう。」

「… リリスより役に立ちそうだ。ありがたく頂戴する。」

「ぬっ。」

 勇斗の言葉が引っ掛かったリリスだったが、たとえ王族でも没落貴族や貧乏貴族と揶揄されるファー家と王子では格が違う。ここは大人しく引き下がる事にした。こうして、七宝を持つ七人と召喚者二人、それに魔女と機械人形の十一人という大所帯は、勇斗と白雪の帰還方法を求めて海の向こうの島にあるという時間銀行本店を目指して旅立っていった。

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