表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
17/39

#17 サクリファイス

「やはり、魔物への生け贄(サクリファイス)は美女と相場が決まっておるらしいの。」

 こうなってはリリスも開き直るしかない。マルファスからの情報を元に、目撃の多い地点の岩場でリリスとアンナはジャバウォックが現れるのを待っていた。

「落ちぶれた貧乏貴族がほざかないでよ。美女ってのは、あたしみたいな美魔女に相応しいの。」

 アンナは相変わらずリリスの言動が鼻につくらしい。

「お前は魔女でのうて妖女であろうが。」

 挙げ足取りはリリスも得意だ。

「細かい事、気にする女だねぇ。そんなんだから、嫁ぎ先も決まらないんだろ? 」

「それとこれは関係あるまいっ! 」

「どうでもいいけど。」

「早く。」

「現れて。」

「くれないかしらねぇ」

 もう後半は異口同音になっていた。すると、突然風の音が変わった。と同時に変な臭いが漂ってきた。

「この臭い… お主ではなさそうじゃの。」

「当たり前でしょ? とはいえ、そう慌てて現れなくてもよさそうじゃない? 」

 二人が風上の方を見ると今度は妙な鳴き声も聞こえてきた。

「姿が見えぬというのも不気味なものじゃな。」

「必ず、ご主人様が守ってくれるから大丈夫。」

「何故、言い切れる? 」

 リリスはアンナに意地悪そうに聞いた。

「そう言うあんたはどうなのさ? 」

「そりゃ助けに来るであろう。必ずな。」

 結局のところ、二人は勇斗を信頼している。如何にコッペリアが力説しようとも、囮役の二人が勇斗を信用していなければ、こんな作戦は成り立たない。

「ぬわっ!? 」

「きゃあ! 」

 二人に突然、宝衣クロスが掛けられた。ジャバウォックの登場は、それだけ唐突だった。宝鏡スペクルムに映った姿に翼を認めるとアリスは宝杖パーセムの突風でジャバウォックを下がらせた。そこでハーメルンは宝笛パイドを吹き鳴らして焔で逃げ道を塞いだ。するとローズの宝瓶アクアリウスから放たれた水が上空から針のような雨となってジャバウォックの翼をボロボロにしてしまった。地に落ちたジャバウォックは勇斗が宝剣エクリプスを持って近づいても気づかない。その首を落とすのは一瞬だった。すると、その傷口から鏡の欠片のような物が出てきた。

「これ… 」

「触るでないっ! 」

 欠片を拾い上げようとしたアリスをリリスが一喝した。

「自分の体内に埋め込んでおるとは、用心深い奴よのう。だが、魔物の血にまみれた物に迂闊に触れてはならぬ。コッペリア、ローズ、頼めるか? 」

 だが、リリスに頼まれてもコッペリアは即答はしない。一旦、視線勇斗に向けると頷いたのを確認してから拾い上げた。機械人形であるコッペリアに毒は効かない。しかし、溶解や腐食の恐れもある。ローズに聖水で即座に洗い流して貰うと欠片はキラキラと輝きを取り戻した。

「残留物、検知されません。白雪様、お受け取り頂いて大丈夫です。」

 コッペリアの差し出した鏡片を受け取ると、一瞬、光を放ってスペクルムと一つになって形を変えた。

「おぉ、これじゃこれじゃ。これが妾の知るスペクルムじゃ。」

「無事にジャバウォックを倒したみたいだね。」

 声のした方を見ると見覚えのあるような、ないよう老人と少女が立っていた。

「誰? 」

 誰もが自信を持てなかった事を白雪はストレートに聞いた。

「クロウだ、クロウっ! マルファス・クロウとライム・クロウっ! ここは忘却の森じゃないよ!? 」

「いや、そんな気もしたんだけど… 虚像が盛り過ぎだったから確認。」

「も、盛ったていいでしょっ! 少しでも可愛く見られたいお年頃なのっ! 姿取り戻したら用は無いわ。おとなしく七宝を置いて… 」

 そこで勇斗がエクリプスの柄に手を掛けた。

「じょ、冗談よ、冗談。誰がジャバウォック倒すような連中に喧嘩売るもんですか。」

 そう言ってライムはマルファスの後ろに隠れた。

「申し訳ありませんな。母親が居ない所為か、甘やかし過ぎたのか、礼儀を知らぬものでして。」

「まぁいい。取り敢えず赤と白女王の所に戻って水晶を出る。マルファス、約束は守ってもらうぞ。」

「えぇ。口頭でも交わした約束はお守りするのがクロウ家ですからな。」

 女王の所に戻ると赤い豪華なドレスを着た女性と白い品のあるドレスを着た女性が口論の真っ最中だった。元々、鏡の国の覇権を争っていた姉妹が、ジャバウォックによって姿を奪われた為に、一時休戦していたにすぎない。元の姿を取り戻したからには、争いが再開されても不思議ではない。

「今、行かない方がいいぜ? 」

 突然、湧いて出たチェシャ猫の頭に忠告された時には遅かった。

「勇者様っ! 勇者様、この赤の女王の夫取り戻しなって鏡の国を治めてくだされ。」

「勇者様は、この白の女王の為にジャバウォックを倒してくださったのです。貴女のはついでにすぎないの。だから、この白の女王の夫になるのです。」

 二人の女王は国覇権ではなく、勇斗の取り合いをしていたのだ。

「どっちか選ぶとか無理だから。それより… 」

 ここでアリスと白雪が顔を顰めた。

「今の誤解されますよね? 」

「そうね。」

 アリスに白雪も同意した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ