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男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
12/39

#12 来た風の対応

「それなら、私がいきますっ! 」

 そう言ってアリスは立ち上がると前に出た。

「分かっているの? あなたに何かあれば回復出来る人が居なくなるのよ? 」

「大丈夫です。風の宝杖パーセムの主として、大鎌からの風にも負ける訳にはいきません。」

 アリスの返事に白雪は首を傾げた。

「にも? 」

「えっ、あっ、いえ、ちゃ、ちゃんと対応してみせますっ! 」

 分りやすいリアクションにリリスは笑いをこらえていた。

「… 信じるわ。」

「はいっ! 」

 再びジャッカルが大鎌を振るうと放たれた烈風に向かって、アリスはパーセムを振るった。いつもは癒しの風を放つ杖はジャッカルの放った以上の烈風を巻き起こした。相殺するどころか押し返し、さすがにジャッカルも手で目を覆った。その手を離した時、勇斗の姿を見失っていた。

「バカな!? エクリプスが隠し遂せるのは姿だけの筈っ! 臭いも気配もしないだと? 」

 ジャッカルが慌てるのも無理はない。勇斗の気配が完全に感じられなかった。アリスやリリスたちの様子からして、逃げたとは思えなかった。辺りを見回しても水溜まりが散在しているだけだ。元々、水路の在るこのフロアでは珍しい事象でもなく気にも止めなかった。しかし、ジャッカルは気づいていなかった。いつもよりも水溜まりが多い事に。その水溜まりから突然、水柱があがる。驚いて後退ったジャッカルに背後の水柱から姿を現した勇斗が一太刀を浴びせて別の水柱に姿を消した。だが、その様子すら見えていないジャッカルは動揺していた。その瞬間を狙ったように風と水の刃が次々と襲いかかる。ジャッカルの強靭な毛皮も水に濡れ、数十発の刃の攻撃に堪らず悲鳴をあげた。

「おのれ… おのれ小癪な人間共めが。やはり、貴様らが七宝を持つべきではないのだっ! 」

 怒り狂ったようにジャッカルは見えない勇斗ではなく、少女たちに襲い掛かろうとした。その瞬間、ジャッカルの前を立ちはだかるように水柱が上がった。だが、ジャッカルもこの瞬間を待っていた。たとえ見えないとしても少女たちに牙を剥けば、その方向からやって来ると読んだ。背後や横からでは今までのダメージから仕留めきれず手遅れになるかもしれない。そう判断するだろうと読んでいた。そして水柱から何かが出て来る水飛沫にタイミングを合わせて攻撃を仕掛けようとした。だが、ジャッカルの体は動かなかった。

「ハーメルン… 」

 ジャッカルの目に映ったのは宝笛パイドを吹き鳴らすハーメルンの姿だった。身動きの取れないジャッカルに勇斗は容赦なくとどめを刺した。

「ハーメルン… 加点。」

「よっしゃーっ! 」

 コッペリアの声にハーメルンは思わずガッツポーズをしていた。そんなハーメルンの横をすり抜けるようにコッペリアは、どこから取り出したのかタオルを手にずぶ濡れの勇斗に向かおうとした。が、その背後からアリスが駈け足で追い抜いていった。

「今、温風で乾かしますネ。」

「よいのか、白雪? アリスは積極的じゃぞ? 」

「な、何が? 」

 いつもは冷静を装っている白雪が、一瞬動揺したのをリリスは見逃さなかった。

「もたもたしていると、取られてしまうぞ? 」

「私は下世話なオバサンの相手をするほど暇じゃないの。早くこの迷宮を出て元の世界に二人で帰らなきゃいけないのよ。」

「だ、誰がオバサンじゃっ! 」

 憤るリリスを尻目に白雪は巨大な植物を見上げていた。

「さてと。どうやって登るの? どう考えても、この高さじゃ登りきる前に力尽きるわよ? 」

 白雪に言われるまでもなく、上のフロアに辿り着くにはあまりにも高い。足場も少なく体力的にもきつそうだ。

「ふぁ~。水柱じゃ届かないよねぇ~。あれぇ~!? 」

 ローズも上を見上げたが、そのまま後ろに倒れそうになった。それを支えようとして支えきれずにペロが尻餅をついた。

「ふにゃぁ~っ。」

「ぁあ~ごめぇん。」

 勇斗は途中で休憩出来そうな場所を探したが、大きな葉はあるが、その元を見ると強度に不安を感じざるをえない。

「メイジー、宝衣クロスって、どのくらい広げられる? 」

「?」

 メイジーは勇斗に問われて無言で首を傾げた。

「私たち善一郎が乗れる絨毯みたいになる? 」

 白雪に問い直されてメイジーは大きく頷いた。

「アリス、あなたの風で全員乗った状態で持ち上げられる? 」

「え、えと、下に風が吹き込む隙間があれば… 。」

「ローズ。」

「大丈夫ぅ~。吹き上げちゃうよぉ~。」

 白雪が尋ねる前にローズから答えが帰って来た。この様子を見ていたコッペリアが怪訝そうな顔をしていた。

「意思伝達系統が理解不能。視覚、聴覚、触覚等を使用した形跡無し。」

「以心伝心という奴じゃ。」

 リリスにそう言われてもコッペリアの表情は晴れない。

「電信行為の形跡無し。」

「あぁ、心が分からないと以心伝心は分からないかのぉ。」

「大丈夫だよ、コッペリアちゃんには俺様が心を教えてあげるから。」

「遠慮… いえ、却下します。誤情報もしくは片寄った情報の可能性が極めて高確率と予想されます。」

「そんなぁ… 。」

 ハーメルンは力無く肩を落としていた。

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