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男女'n Dungeon  作者: 凪沙一人
11/39

#11 ジャッカルと豆の樹

「分かった。今度こそ心を入れ替える。だから、俺をマスターに選んでくれ。頼むっ! 」

 ハーメルンは機械人形であるコッペリアに両手を合わせて頭を下げていた。

「マスター、どういたしましょう? 私の中ではハーメルンの言動に対する信用度0.1%未満と出ておりますが? 」

「コッペリアから見て可能性がゼロでないなら経過監査でいいんじゃないか? 」

「承知いたしました。ではハーメルン。貴方の今後の行いを監査対象とし、勇斗様より人として優れていると判断した場合のみ、次期マスター候補といたしましょう。尚、一度でも当パーティーメンバーに対する敵対行為が有った場合は即刻条件解除とし、相応の処分とさせて頂きます。」

「チャンスを貰えるなら、言うとおりにする、する。ほら猫っ。長靴返すぞ。」

「ペロ様に態度が横柄です。減点。」

「い、いや。ペロさん、長靴をお返しいたします。」

 コッペリアの採点にハーメルンは慌てて言い直した。

「ペロでいいにゃ。」

 ペロは返ってきた長靴に嬉しそうに足を入れた。

「それでハーメルン。俺たちにお前を倒さないと、この階を出さないと言ってたが、この場合どうなるんだ? 」

「俺様を倒さないと、とは言っていないよ。七宝を手に入れるまで出さないと言ったんだ。予定とは変わってしまったが、七宝は揃った。最後の難関といこうじゃないか。この階のボス、ジャッカルの元へ。」

 結局はフロアボスを倒さないと先に進めないのは今まで通りのようだった。ハーメルンについて奥へと進むと玉座のような椅子に犴のようにも虎のようにも見える頭をした者が座っていた。

「ジャッカルっ。七宝を揃えてきたぞ。外へ出してもらおうか。」

 ハーメルンの言葉にリリスが慌てた。

「何を申す!? 七宝を此奴に渡すつもりか? 」

「勿論。どんなに貴重なお宝でも、迷宮の中では飯の種にもなりはしないからね。」

 リリスの問いにハーメルンは平然と答えた。だからと言ってリリスが納得出来る筈もない。

「冗談ではない。ここまで妾が… 妾たちが… 勇斗たちが、どれほど苦労をして集めてきたと思っておるのじゃっ! 」

 突っ込まれる前にリリスは自分で訂正した。

「別に渡さぬなら奪うまでだ。貴様らの命もろともな。」

 ジャッカルは巨大な鎌を肩に掛けて立ち上がった。

「リリスに賛同する訳じゃないが、渡したからといって、外に出られる保証は無いんだろ? っていうか武器が無くなったら命の保証すら怪しいんじゃないか? 」

「そうにゃ、そうにゃっ! カラバ侯爵だって長靴持って出てこれたのにゃ。こんな奴に渡す事はないのにゃっ! 」

 ペロにしてみれば、カラバ侯爵から頂戴した長靴を手離す気はまるで無いらしい。

「お前らなぁ、ジャッカルと戦って勝てると思ってるのか? 」

「マスター、ジャッカル背後の大型豆科の植物の弦の上方に次階への通路を確認。戦闘して勝利する確率より脱出の確率が高いと思われます。如何なさいますか? なおハーメルン、可能性の放棄を確認。減点。」

「ちょ、ちょっとコッペリアちゃん!? 」

 減点と言われて、またもハーメルンは動揺していた。

「どうせ、倒して通るとか言い出すんでしょ? 」

 呆れたように勇斗に白雪が言った。

「当たり前だろ? 七宝が目当てなら、どうせ逃げても追ってくる。俺達に空を飛ぶ方法でもない限り、登ってる最中は手も足も使えない無防備もいいとこだ。こいつに飛び道具でもあれば下から狙い撃ちされるのがオチだ。ならば先に憂いを断つ。」

「ゆ、勇斗さんが怪我したら、私が治しますっ! 」

「頼むぜ、アリス。」

「は、はいっ! 」

 意気込むアリスの様子がリリスには微笑ましくも、いじらしくも見えた。

「罪な男よのう。」

「なんか言ったか? 」

「いや、何も。」

 おそらく、アリスの様子に気づいていないのは勇斗だけかもしれない。

「な、ならば、俺様も戦うぞ。見ててくれ、コッペリアちゃんっ! 」

 先ほどまで七宝を渡してしまおうと言っていたのが嘘のようなハーメルンの手のひら返し。こっそりコッペリアに減点されていた。

「ハーメルン、パイドは焔の宝笛。豆科植物は可燃性と思われます。自重してください。」

「お、おぅ。」

 出鼻をコッペリアに挫かれてハーメルンは消沈した。そんなハーメルンを尻目に勇斗が前に出ると、その横に白雪が立った。

「向こうの攻め手が分からないんだから、防御は必要でしょ? 」

 すると反対側の横に珍しくメイジーが自ら立った。

「が、頑張る。」

 対峙したジャッカルは立ち上がったまま、動く気配はない。だが、勇斗としても隙が見つからない。

「アンナっ! 」

「はいっ! 」

 勇斗の声にアンナが妖気を放った。この辺りが魔女ではなく妖女たる由縁なのかは知らないが、ジャッカルも肩に掛けていた巨大な鎌で妖気を振り払った。その余波で巻き起こった烈風をメイジーが宝衣クロスで防いだ。

「白雪、下がれ。お主の宝鏡スペクルムでは大鎌が当たれば割れてしまうし映らぬ風は跳ね返せぬ。」

「そのようね。」

 リリスの言葉に白雪はおとなしく下がった。リリスからすれば、いくら知っているスペクルムと形が違うとはいえ、大事な七宝の1つを失いたくないだけかもしれない。

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