原子・1
あなた、原子のつくりって「ちゃんと」知ってる?
物質世界を構成する基本単位であるこいつの(現代的な)描像がいまいち世間に浸透してないようだから、きちんと説明してみるよ。
原子は、ものを小さく刻んでいって、最後の最後に「もうこれ以上はふたつに分割できない!」という物質の限界最小パーツと説明される概念だ。
だけどこれが最小じゃなかった、って話。
だって、刻んで刻んで最小パーツと思えるまでになった小粒をズームアップし、例えば甲子園球場ほどの大きさにまで拡大してごらんよ。
もしそれが砂つぶのように中身の詰まったものだったとしたら、もう一段小さく砕けない理屈はない。
ところが原子のつくりはそうじゃなかったんだ。
行き着いたその最小を拡大して調べてみると、球場のマウンド付近にあずきほどの原子核がちょんとあり、それを中心にして、スタンドの外周ほどの大きな軌道をけし粒のような電子がめぐってたんだ。
これが20世紀初頭の古典物理による原子の説明だよ。
原子の中身って、スッカスカの空っぽだったんだ。
が、21世紀も近づくと、さらに描像がマジカルになる。
最新の量子論では、電子は原子核の周囲を回ってるわけじゃなく、取り巻いて存在してる、と説明される。
軌道周回する電子には実体がなく、位置のみ、あるいは運動量のみを持ってるんだ。
そして「電子はあまりにもはやいスピードで原子核の周囲をぐるぐると周回するため」という説明は正確じゃないけど、ここではそれがわかりやすいんでそんなふうな感じとだけしておくが、甲子園球場の容積内いっぱいのあらゆる位置に電子はひろがってる、という状態になってる。
電子はもやもやと雲状の球体に散開してるんだ。
ただ、これを「回ってる」と表現するのは間違いだ。
なぜなら電子は、一個しかないにも関わらず、雲の中のすべての地点に同時に存在してるからだ。
まるで無限数個に分身したかのように。
つづく




