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科学コラム  作者: もりを
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死んだらどうなるか?問題・9

この世は様々な波でできていて、ぼくらはそうした抽象的な非物質の振る舞いを読み取って、脳の中で勝手解釈をし、理解しやすい形の物質世界の描像に結んでいるのでした。

ヘビは舌で赤外線を感知して周囲の状況を把握しますし、コウモリは音波を出しては跳ね返りを受け取るという「エコーロケーション」で、ものを立体的に可視化(矛盾した言い方ですが)しています。

彼らはそれぞれ、自分の中に築いた世界(人類とは異質な世界)を生きているのです。

X線で見る体内や、電波望遠鏡による天体観測、ミュー粒子という素粒子を打ち込んでピラミッドの中を探ろうという「世界の認識方法」もあります。

同様に人類は、色々な波長の光から、赤外線と紫外線の中間にある「可視光」という必要十分なゾーンだけを感知して、その情報で風景を再構築し、脳の中で「自分にとって理解しやすい世界」をつくり上げています。

それは創作された表現世界と言うべきであって、自分の外界には、自分の見ている世界がそのままひろがっているわけではないのでした。

ところで、世界が波でできているのは結果であって、その原因は出自にあります。

われわれの住むこの宇宙は、ビッグバンという大爆発から生まれました。

それ以前には、この世界にはなにもなかったのですよ。

物質どころか、空間も、時間も、なーんにもなかったのです。

ところがどうしたいきさつでか、ある瞬間に特異点が発生し・・・これは「点」の定義そのままに、位置だけがあって大きさを持たない、という無茶なしろものですが・・・その一点に、以降に開く世界のすべてが押し詰められたのです。

そして、大爆発を起こします。

その瞬間に、空間が開き、時間が開始されたのでした。

同時に、とてつもない!・・・という言い回しではとても追いつかないほどの、猛烈な光と熱が放出されました。

つまり、最初の最初から、この世界には波しかなかったのです。

それ以来、宇宙空間は今に至るまでひろがりつづけています。

ひろがりつづける、というのは、光が薄まりつづけ、熱も冷めつづける、ということを意味しています。

光もまた、量子という名の「運動量だけがあるので質量は計算できても、実体はおぼろ」という素粒子なので、宇宙が大きく育てば育つほど、当初に固まっていた密度が散り散りに拡散していきます(波がだらしなく伸びていく、と解釈もできます)。

その光は現在どうなってるの?と言いますと、猛烈な波長だった光は細切れにされて宇宙全体に一様にひろがり、「宇宙マイクロ波背景放射」という、つまり宇宙空間のどこを切り取っても、まったく均質に弱まった波がみっしりと詰まった状態になっています。

ビッグバンで発生した光は一定量なので、せまくて高密度→広くて低密度、となっていくわけです。

逆に言えば、この背景放射全部を集めれば、ビッグバンがつくり直せる、ということです。

ところが、ここでまたエントロピーの話になりますが、散らかったものは散らかりつづけますし、熱は高いところから低いところにしか流れません。

ここに仕事を加えると、エントロピーの値が増えるので、要するに「エントロピーの増大は不可逆」となります。

これは、背景放射を全部集めるには、ビッグバン以上のエネルギーが必要となる、とも言いかえられます(結果、エントロピーは増大します)。

このビッグバンのだだ流れとエントロピーの法則ゆえに、宇宙の時間は対称性を持たず、一方向にしか流れることができない、となるのでした。

さて、宇宙は膨張をつづけ、光は空間に拡散しつづけ、熱もまた下がりつづけます。

熱とは、波の振動そのものなので、これが伸び伸びになりますと、つまり冷めていくわけです。

宇宙空間がひろがりにひろがったために、熱も冷めに冷めまして、現在の宇宙温度は−270度なんてことになっています。

では、どこまで冷めるのか?というところですが、温度というものには下限がありまして、−273,15度が絶対零度と定められています。

定めたのは人類ではなく、自然でありまして、要するにこれは絶対の定数です。

この温度になると、あらゆる波の動きが完全に静止してしまうのです。

逆に言えば、閉じた系のあらゆる波が静止すると、−273,15度に達します。

エントロピーは最終的に、「一切の波の静止状態」に向かって増大しつづけるわけです。

ご臨終の際に、心音の波が「ぴーーーーーーーーー」とまっすぐになりますよね。

あれのようなもので、宇宙空間の温度が−273,15度になった時点で、この世界は「おしまい」となります。

「世界の死」こそがエントロピーの最大値というやつで、平たく言えば、固く固く結んでいたビッグバンが、ひらきにひらき、ついに散らかりきった状態です。


つづく

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