表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第五話 戦闘準備

『ただいまより学内対抗戦、一年B組第五小隊ならびに一年C組第六小隊の対戦準備を開始します』


 校内に流れるアナウンス。

 剣会長の柔らかい声も、今は緊張を作り出す原因となっていた。

 今日は我が第五小隊の初陣だ。出来れば勝ちたいところだが……。


『勝利条件はフラッグ破壊もしくは奪取、敗北条件はその逆です。支給武器はウレタン製打棒。

 各小隊一人まではオペレーターとなり、戦闘区域外にて無線を使用した自軍への情報支援を行う事を認めます。

 戦闘人員は相手隊員による攻撃を十回受けた時点で戦死扱いとし、戦闘区域外への退場を義務付けます。その場合、退場した隊員は戦闘区域に戻る事はできません。

 戦闘区域は本校舎一階から三階、使用可能な階段は中央階段、及び西階段とします。第五小隊の旗は一階に、第六小隊の旗は三階に設置してあります。

 なお、器物を損害した場合は無条件でその小隊が敗北となりますので注意してください。

 以上で説明を終わります。今からちょうど十分後に戦闘を開始するので、各小隊は準備をお願いします』




「というわけで、誰かがオペレーターになれるらしいんだけど……」

「やっぱり支援は必要よね。目視だけじゃ不意をつかれるかもしれないし」


 俺の言葉に神崎さんが意見を返す。戦争の時だけは俺に従ってくれるのだろうか。


「別にオペレーターがいなくても良いみたいなんだけど、やっぱり必要だな。……伊庭さん、やってもらえないかな」

「……私?」


 小隊全員を見回した後、俺は伊庭さんに言った。

 俺、岸本、楯岡は男だから参加はほぼ確定といっても良い。神崎さんはやる気に満ち溢れてるから今ここでオペレーターなどという後方支援役を頼めばとんでもない事になるだろう。

 という事は必然的に伊庭さんしか残らなくなるし、何より彼女はか弱い女生徒だ。これは偏見かも知れないけれど、常に女性を守れと言われている俺としては譲れない問題だ。


「うん、どうだろう」

「自信は無いし、私はあまり戦争に対してやる気が無い……。それでも良いの?」


 少し不安を残す言葉だけど、それでも仕方ない。

 俺は笑顔で頷いた。


「ああ、頼む」

「……了解」




 伊庭さんが戦闘区域外――オペレーションルームと呼ばれる特別な部屋――に移動した後、戦闘人員である俺ら四人は地理感覚を掴むために校内マップを見ていた。

 戦闘区域となるのは本校舎、つまり各クラスの教室が集まる棟だ。

 俺達のフラッグが置かれているのは一直線になった本校舎一階の廊下の突き当たり。特に遮蔽物は無いため純粋な力勝負になるだろう。

 自軍フラッグの近くにあるのは東階段なのだが、今回の戦いでは使用できない。敵のフラッグがある三階に行くためには廊下の向かいにある西階段と、東階段と西階段の間にある中央階段を使用するしかないということになる。


「三回の東側か西側、どっちに相手フラッグがあるかわからない。だからまずは中央階段から進んで様子を見よう」

「それで西側にあれば西階段から特攻、東側にあれば慎重に進軍とそういうわけか?」


 俺の言葉に岸本が答える。


「ああ……ただ東側にあるとしたら厄介だ。敵フラッグまでの道のりは長いし、攻撃されて良い回数は十回までだからな」

「そんなの、避ければ済む話じゃない」

「そう上手く行くかな……」


 神崎さんは自信有り気に胸を張るのだが、俺は少し心配だった。

 縦や横に薙ぎ払われるならともかく、腰辺りで打棒を構えたまま突進されれば避けるのは難しいだろう。

 それに敵の作戦が全員で一人ずつ囲んで倒すなどというものだったらすぐに戦死者が出ることになって戦力低下は免れない。


「ここは……どうするかな……」

「迅速に行動して迅速に敵フラッグを破壊よ。攻撃は最大の防御でしょ」

「ハイリスクハイリターン過ぎないかな」

「失う事を躊躇ってどうするのよ。やらなきゃ結果は返ってこないわ」


 それは確かに正論だが……。


「私は行くわ。全力で敵フラッグを目指す」

「一人は危険だよ」

「出来るわよこれくらい。私の運動神経を舐めないで欲しいわね」


 そう言って神崎さんは手に持った打棒をくるくると回す。

 まあ、確かに伊庭さんと比べれば運動神経は良いかもしれない。

 それでもやっぱり彼女は女性だ。


「俺も行くよ。神崎さんだけじゃ心配だし」

「大きなお世話よ」

「何より女の子を一人で行かせるわけには――」


 言った瞬間に俺の体は突き飛ばされていた。

 突然の事だったので受身を取る暇も無く背中を床に思い切り打ち付ける。

 目をあければ鼻先に神崎さんの打棒が迫っていた。


「女だから何なのよ。あんたに心配してもらう義理なんて無いわ」

「いや、俺は……」

「女は守らなきゃいけない存在とか言うの? くだらない。そんなのあんたの自己満足でしょ」


 「それにあんたに守られるなんてまっぴらごめんだわ」そう付け足して神崎さんは口をつぐんだ。


「ごめん」


 今の俺にはそれしか言えなかった。




「さて、わかってると思うが草壁」

「お前は戦闘しないんだっけか」

「そうだ。正直打棒を持つだけで腕が震えちまう」


 ぽんぽんと叩かれた岸本の右腕は、確かに震えていた。

 これも岸本が戦闘に参加しない理由の一つか。


「まあそれは良いけど、一応岸本は神崎さんと一緒に進軍してくれ。戦闘はなるべく回避して」

「了解」


 俺は神崎さんがフラッグ破壊に集中できるように敵を撹乱する役目。

 岸本は神崎さんと共に行動だから残るは楯岡だけか。


「楯岡は俺らのフラッグの護衛に当たってくれ」

「元からそのつもりだった。……敵陣に乗り込むのは嫌だったからな」

「あ、そう……」


 神崎さんは俺を嫌っている。岸本は戦闘に参加できない。楯岡と伊庭さんはやる気が無い。

 ……本当に大丈夫なんだろうかこの小隊。


『準備時間は後一分で終了となります。これよりカウントを開始しますので各小隊は自軍フラッグ前に集合してください。六十、五十九……』


 スピーカーから会長の声が聞こえ、戦闘開始のカウントが始まった。

 まだ完全に纏まってはいない――というかむしろ空中分解ギリギリ――の俺達第五小隊の初陣がもうすぐ始まる。




 でも、ここまできたらやってやるさ。

これから戦闘が始まる訳ですが、戦闘描写に不安が残ります。

それでも何とか頑張りますのでどうかお付き合い下さい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ