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第三話 岸本の事情

文字数少ないですね、次は頑張ります。

ついでに後書きには次回予告的なものも書いてあります。

 カリカリカリと断続的にシャープペンシルがノートの上を走っている音が聞こえているこの教室。

 黒板ではバーコード頭がとても物悲しい数学教師、的場まとばが唾を飛ばしながら不等式についての説明を繰り返している。

 『戦争』だの小隊長だの言っているので普通の授業はないものかと思っていたのだが、どうやらあるようだ。

 別にこれについてはがっかりしない。むしろ小隊長であるという事実が俺を落ち込ませる。


「……うあぁ」


 顔をべったりと机につけて辺りを見回す。

 岸本、は寝ている。あいつは寝る事しか考えていないのだろうか。今度尋ねてみたい。

 楯岡は……窓際の席に座っているからなのか、外を見ていた。的場の事はどうでも良いらしい。

 神崎さん。背筋を伸ばし、自信に満ちた表情で授業を受けている。的場に指名されても淀みなく答えるし、早くも教師からの評価は良いのではないだろうか。

 そして俺の隣。左に顔を向けると伊庭さんと目があった。


「……」

「……」


 互いに無言。俺は気まずいから目を逸らそうと試みるのだが、如何せん彼女の視線は俺を捕らえて放さない。

 沈黙の時間――もとい見つめあい――はかれこれ五分ほど続いた。その間に的場の話が進んでいたようだが、それどころではない。


(気まずすぎる!)


 伊庭さんは容姿がかなり整っているからこう、見つめられると顔が熱くなるというか。とりあえずやめていただきたい。


「……」


 そんな俺の気持ちを察してくれたのか、伊庭さんは何の躊躇もなく俺から顔を背け、板書の書き写しに取り掛かった。


(……俺もやるか……)


 俺のノートは見事にまっさらだった。






「おい、草壁」


 昼休み。食堂に向かおうと思っていた俺だったが、背後からの声で立ち止まらざるを得なくなった。

 どこかで聞いた声だなと思って振り向けばそこには豪快な笑みを見せる爆睡魔人岸本と意識飛翔率100%楯岡の二人がいた。


「岸本と楯岡? 何か用か?」

「同じ小隊なんだ、昼食くらい一緒に食おうぜ」

「おい、勝手に決めるな岸本。僕は一人でのんびりとだな……」

「うっせ。お前の意見なんざ聞いてないんだよ、このメンヘラー」

「なんだって? 失礼な奴だな」


 喧嘩に突入しそうだった二人を苦心して宥め、俺達は三人で食堂へと向かう事になった。

 纏まりが無い小隊と思っていたけれど、こんな風に誘ってくれる隊員がいるというのは嬉しかった。

 



 食堂は広かった。

 およそ七百人以上いる生徒達全員分の椅子を用意してあるのだから当然といえば当然だが。

 俺達は今日のランチを食堂のおばちゃんからもらい、三人分の空席を見つけてそこに座った。


「さて、と。ちょっとお前さんに話しておかなきゃいけない事がある」


 座った直後、岸本がおもむろに口を開いた。


「なんだ?」

「俺は『戦争』には出る」

「え? それはそうだろうけど……」

「けど、『戦争』で戦うつもりはない」


 何を言っているんだ? 岸本の言葉を上手く飲み込めない。

 そんな俺を見かねてか、楯岡が助け舟を出してくれた。


「つまり岸本はあくまで『戦争』に出るだけ。敵小隊との交戦はしないということだ」


 なるほど。よくわかった。


「って、出て貰わないと困るんだけど」

「だろうな」

「なら――」

「無理だ」


 何を言っても無理だ、出来ないの一点張りだった。

 岸本が『戦争』を忌避する理由は一体なんなのだろうか。


「理由を聞いても良いか?」

「深く話すつもりはない。が、俺は去年『戦争』を体験してる」

「え? つまりダブり、なのか?」

「そういうこった」


 そうか。去年『戦争』を体験しているから、昨日の小隊編成の時大して動揺していなかったのか。


「それだけ隊長さんに伝えておきたかったんだけどな」

「そうか、ありがとう。でも……納得は出来ないな。理由を説明してもらってないし」

「理由、理由ねぇ……。まあいつか話せる日が来ると思うから、それまで待っててくれ」

「その理由を俺達に話してくれたら、岸本は『戦争』に参加するのか?」

「さて、ね」


 肩を竦めておどけて見せた岸本が、小さく呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。

 「許されない限りはな」――彼はそう言った。

 許されない限り……。彼が何を背負っているのか、それは今の俺には知るよしもないだろう。

 この話はここでやめて、途中空気と化していた楯岡と三人でランチに舌鼓を打った。




「あ。草壁じゃないか」

「お、館山さん。こんにちは」

「何を言っているんだ、朝から顔を合わせているだろう?」

「ああ、そういやそうだったな……」


 昼食を終えて三人でだべっていると、昼食を終えたのかお盆を持っている館山さんに声をかけられた。


「なんだ、知り合いか草壁?」


 岸本が館山さんに興味を引かれたのか耳元で囁いてきた。


「ああ。彼女は館山葉月さん。俺のルームメイトだ」

「へぇ。ルームメイトね……………………お前なんつった?」

「え? いやルームメイト……あ」


 忘れていた。

 一日で気にならなくなるものだからすっかり頭から抜け落ちていたけれど、俺と館山さん、男女が二人相部屋というのは特異、というかものすごく異質だ。

 岸本が驚いて俺の首を締め上げているのも「フラグ立ちまくりじゃねえかこの野郎……!」と言っているのも仕方ない……。


「ってんなわけあるか!」

 

 一人ボケノリツッコミ発動。

 岸本の頬にビンタをお見舞いした。


「落ち着け。落ち着くんだ岸本」

「これが落ち着いていられるか!? こんな美人さんと二人相部屋ってお前何なんだその羨ましすぎるシチュエーションはぁあああああ!」

「び、美人さんか……なかなか嬉しい事を言ってくれる」


 岸本は一人激昂、館山さんは岸本の言葉に何故かご満悦。楯岡は我関せずと言った風にやっぱり宙を見つめている。

 このおかしすぎる事態を収集させるべく、俺は口を開いた。


「落ち着け岸本! 館山さんも何か言ってやって!」

「あ、ああ。私たちはルームメイトではあるがあくまでそれまでの関係だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「そ、そういうことだ岸本。だから落ち着け!」

「俺が言いたいのはそこじゃねー! 女の子と二人相部屋ってことが問題なんだよ!」


 そんなこと言われても、部屋割りはアトランダムな訳だから何とも言えないのだが……。



 結局岸本の抗議は昼休み終了まで続いた。

 ……それにしても、岸本の事情ってなんなんだろう。

途中から展開がおかしくなったこと、お詫び申し上げます。

とりあえず今回の話のメインは岸本の事情と彼の人となりについてです。

館山さんと相部屋の草壁に対する態度から、その性格がわかっていただければ幸いです。

あ、それとWEB小説ランキングに登録させていただきました。この作品を面白いと感じてくださったならば、クリックしていただけると作者の励みになります。

また、感想批評はいつでもお待ちしております。何分初めてなものなので、是非アドバイスを頂きたいです。


〜次回予告〜

未だその全容が明らかになっていない『学内対抗戦』、通称『戦争』。

学園で最も強大な力を持つ小隊――生徒会から、改めて説明が行われるが……。

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