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20 地球追放スローライフ(完結)

 ホウライは宇宙人との戦いの後、引退を宣言していたためかつての独裁者ナポレオンのように幽閉されることになった。


 しかし大陸拳をポンポン放ち山脈すら爆砕する破壊力を持つことはすでに周知。


 計画を早めて事故死を前倒しという話も持ち上がったが、真の不老不死であり太陽に落ちても死なないとわかり人類の手には負えないと判断された。


 超能力を与えたという発言は後継政府に否定された。昔の独裁者のように信仰を得て復権されても困るからである。


 幽閉先に選ばれたのは月の地下基地だった。


 古代人の使っていた施設の再利用である。


 この環境はホウライには都合が良かった。


 ひたすら人類を見守ることができる。望み通りに。


 ホウライは月面で自給自足のスローライフを楽しんだ。


 もとより不老不死、水も食べ物も空気も重力も必要としない。超感覚や古代人の設備で地球を様子見し、修行して過ごせば時間は飛ぶように過ぎていった。


 ホウライが指名した後継者の条件を満たしたのは隼人とメイリンだったが、『同じSランク』、『宇宙人ごと自作自演』、『約束された出来レース』、『卑劣で卑怯な裏取引の成果』、『国を売った売国奴』、『野村隼人は脳改造人間だから人間じゃないので人権いらないよね』、『改造人間でSランク化とか楽してズルしたチートじゃん俺も改造されたいわ』、『俺が改造受けたらはやけんまとか雑魚だしワンパンだし』、『おっぱいで童貞を騙した売女』、『結論全部ゴミでFA』、『無効にするべき。全人類もそう言ってる』と悪評しか立たなかったしホウライ以外の支配者層が死んでも利権と軍隊を手放そうとしなかったため隼人とメイリンは継承を辞退。


 ユーラシア大陸とインド亜大陸と中東と東南アジアとアフリカ大陸その他を統一した人類最大国家はアレクサンドロス大王の死後よりも悲惨な内乱に突入。


 五百以上の国に分裂し、独立の名目で利権と人口確保のために戦争と暗闘と政争をし続けた。


 どこもAランクを上級国民と定め、B~Cランクを搾取する体制でより豊かさを求めて発展していった。



 隼人は黒猫と共に古代人の遺体を見つけて埋葬し、弔った。


 黒猫は、最後の古代人とともに永遠に眠ることを選んだ。


 実は、宇宙人に破壊された黒い宇宙戦艦が黒猫の本体だったため、その端末である黒猫もすぐに停止する運命だった。


 隼人は黒猫に別れを告げた。





 約十一年後。

 二〇三一年。 

 

 隼人とメイリンは社会的注目度の大きさから隠れて暮らす他はなかった。


 結婚式はひっそりと身内だけで済ませ、誰も知らない場所に隠れ住んだ。


 一年目で生まれた娘カレン……名前は友達から取った……は母から生まれて即座に十四歳ほどの肉体に成長し、その日のうちに人類の心の壁を取り去ろうとしたが、父と母に止められ十年は地球の美しさに触れて過ごすよう説得された。


 カレンは気苦労の多い十年を過ごし、人類の懐疑と視察、理解されたあとの利用と崇拝などの打算と欲望、地球の自然と人間の戦争と荒廃と利権争いと搾取と支配と格差を眺めて過ごした。


 明らかな上位人類、しかも少女型に対する拉致誘拐未遂求婚強要などの事案も毎日十回以上発生した。


 その様子は、メイリンのときよりも数十倍もひどかった。


 一度、剛剣に人類を滅ぼさないかと誘われたが、カレンは丁重にお断りした。


 剛剣はそうですかと言ってどこかに消えていった。


 その後のことは誰にもわからない。


 カレンはストレスが貯まるとホウライに愚痴りに来て、ホウライはカレンの相手を喜んでしていた。親戚のおじいちゃんのようだ。(実際に義理のおじいちゃんでもある)


 やがてカレンが旅立つ日になると、ホウライは『あとは誠一郎に会え』と言い残した。



 あっという間に十年が経ち、旅立ちの日。


 カレンは人類の心の壁を取り去り、テレパシーで宇宙の底を抜いた。


 地球ごと消え去らないように気を使って、誠一郎の投げたヒート・ソードを片手に慎重に宇宙を切り開いて最小限の穴を開けて旅立った。


 カレンは万能でありなんでも超能力で解決できて道具を必要としていなかった。


 だが、誠一郎の剣だけは地球に存在するモノの中で唯一愛着をもって使っていた。


 生まれてからずっと。常にカレンの手元にあった。ヒート・ソード。


 もちろん、融合していた鉄パイプは外して剛剣に返してある。


 力の残滓をまとった鉄パイプは、剛剣ですら持て余す奇跡の代物シロモノであった。今は剛剣とともに行方不明になっている。




 ホウライはカレンの旅立ちを見届けると、十年の地球追放を終えて大地に戻った。


 誰も居なくなった地球をみる。


 この光景を見ることがホウライの目的だった。


 カレンの旅立ち、人の終わり。


 不老不死を目指した目的が終わった。


 あとやることといえば、宇宙人からの仕事か。しかたない。やるか。


 シークレット・ドクトリンに準じ、宇宙卵に生命の光を当てるという大仕事である。


「目覚めよ。」


 人類が残した都市の残骸を目覚めさせ、空にあげていく。


 東京が目覚め、空へ昇った。


 サンフランシスコが目覚め、空に登った。


 ドバイ、アテネ、パリ、ロンドン、モスクワ、シドニー、ニューヨーク、ポートビラ。その他大小の都市がホウライによって目覚め空へ昇る。


 地上にあがったゴミの山も諸共に。


 都市はどんどん合体してゆき、巨大な宇宙船となった。


 人類の文明をすべて固めた宇宙船だ。


 ホウライが目覚めさせた道具は自己進化する。

 

 ナノマシンが都市を結合させ、エンジンを形成し、宇宙の中心への航路を計算する。 


 ホウライは数百年かけて地球を歩き回り、最後の都市を打ち上げると地球を蹴って跳躍し宇宙へ出た。


 宇宙船に乗り込み、中心を目指す。


 三千億年後に起こるビッグクランチに備え、特異点へ向かう。


 機械からの報告で宇宙船に密航者を発見した。


 宇宙人から切り離されて新しい個体となり、サイコダイブを仕掛けてきた分体と、親衛隊長だ。


 二人はわかり合い、友となり、夫婦となり、新種の生命体になった。


 遠くの地球型惑星まで乗せていけという。


 そこで新しい地球を作るのだと。



 

 地上には、地球によって選ばれた、新しい支配種族がすでにいた。


 文明のなくなった地球では、地球擬人化美少女アースに手を引かれてイルカたちが上陸し進化していく……。


【あんよがじょーず、あんよがじょーず……】


 アースに手を引かれ、横に並んだイルカたちが手を数珠つなぎしながら上陸する。


 尾びれを足のように使い、やがて地上に適応して進化してゆく。




 ゴミの巨人により掃除された海は人類が手を加える前の姿を取り戻していたが、やがてまた汚染され、宇宙人が掃除する日がくるだろう。


 すべての生命は地球環境を破壊して進化する存在。


 道具を得て進化したものは自然に帰ることはない。


 恐竜も、原人も、古代人も、人類もそうしてきた。


 最後はホウライとなって宇宙の中心へ生命の光をもたらすか。


 宇宙人の試練を乗り越えカレンとなって宇宙の底を抜いて霊的世界の扉を開くか。



 

 ホウライの宇宙船は飛ぶ。


 地球に別れを告げ、もう戻りはしない。


 誠一郎、隼人、剛剣。


 メイリン、香住可憐、黒猫。


 そしてカレン。



 すべてに別れを告げ、真人は再び名前を捨てて無名に戻った。

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