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18 大陸拳

 ホウライは手近にあったアフリカ大陸に着地し、東へ向かいながら大地を震わせて宇宙人を攻撃し始めた。


 月にさえ届いてSランク最強の名声を手に入れた大陸拳である。


 アフリカ大陸が震えるたびに、成層圏より上の天井に直径数十キロの穴があいて太陽光や星空がのぞく。


 が、すぐに穴はふさがっていった。


 大地の重さを威力に変換して何度でも天や触手の柱を殴り飛ばすが、地球が宇宙人に質量で負けている以上、すぐに本体から補充がきて再生してしまう。


 天井だけでなく触手もそうだ。脳を吸われそうになった民衆が必死の抵抗で超能力で削ってもすぐに補充されて再生する。


 殴り倒しきることは不可能だった。


 かつてアトランティスでも同じように王が宇宙人を殴り続けたが、結局は絶滅して王だけ取り残された。


 大陸拳の打ち過ぎと、それを凌駕する最終奥義を使ったことがアトランティス沈没の原因である。


 ホウライは、アトランティス王の焼き直しをそうとは知らぬまま繰り返していた。



 ちなみに、ホウライはこの二年で道具を目覚めさせる力をほとんど使っていない。


 理由は単純で、宇宙人に全く通用しないからだ。


 二年前に目覚めさせたワゴン車、自販機、剛剣のバイクすべてが宇宙人との戦闘後に一切動かなくなり死んでいた。詳しく調べると、宇宙人と接触した部分から高度なコンピューターウィルスを流し込まれてナノマシンが全滅していた。


 この時点でわかったことだが、宇宙人の肉体自体が五十億年以上の自己改造を繰り返した道具だったのだ。


 ホウライがいくら目覚めさせても、接触即死するうえに五十億年以上遅れてる機械しか生産できない。


 ゆえに、目覚めさせる力は宇宙人との戦いに役に立たないため自ら封印していた。


 ついでに解説すると、ホウライはあくまで肉体的な進化の果てにある真人であり隼人や剛剣のような超能力者ではない。


 圧倒的な力からSランク認定されているが、念動サイコキネシス瞬間移動テレポートなども実は使えないし、テレパシーも心の壁が人類と異なるので通じない。


 だが、超能力による飛行を成層圏まで届く大ジャンプで代用するなど、フィジカルな力技と民衆を黙らせる権力で二年間ごまかしていた。



 ホウライが大陸拳を打つ。


 アフリカ大陸が震える。


 大陸拳で青空を取り戻すたびにマサイ族が遊牧で使ってるスマホで動画を上がるが、塞がる様子も逐一配信された。


 問題は角度だ。


 地球というボールの上にいる以上、地球を包む宇宙人を一気に消滅させることはできない。



 思えば二年前、誠一郎を尋ねる前に大陸拳を使って『地球環』の破壊を試みたことがあるが、やはりすぐに再生されて終わった。


 それもあって一人では勝てぬと悟り、東京へ行ったのだ。


 まだ見ぬ希望を求めて。


 ホウライには大陸拳より更に上位の地球拳という地球の重さで殴る必殺技がある。当てれば月さえ破壊できる最強の技だ。


 大陸一つを海に沈める代償を払えば使うことができる。


 しかし、いかに強くても、射角の問題で宇宙人には無力なのである。


 水星公転軌道にいる宇宙人を地球拳で殴ることもできるが、距離がありすぎるので当てるのが難しい。


 距離が遠いということは、発射から着弾まで数年かかる。


 数年後の位置を計算して撃たないといけない。


 軌道計算できても、宇宙人は動ける。到達前に回避されて終わりだろう。


 大体、隠形されたらホウライには見えない。手も足も出ない。


 再生力(質量)、隠形、そして距離。


 どれもホウライには突破することができない。不老不死の真人なのに、最も進化した肉体なのに。


 今こうして天井や触手を大陸拳で殴ることが、ホウライにできる唯一の戦いだった。


 そして、それで倒すことは絶対にできなかった。

 

 触手が人間を食い尽くせば、アトランティスと同じようにホウライも最後の王になる。

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