3〜5.5(警察官その2)
翌日、私はサンプルの結果から出た多数の動物の血液の出所を探る為あちこちの施設を周っていた。
いつ目撃者の意識の連絡が来てもいいように比較的近場の施設を巡ったが、やはりと言うべきか確信に迫るようなものはなかった。
念のためと案内付きで可能な限りの施設内の見学もさせて貰ったがもちろんオカルトめいたことは一切行っていなかった。
━━━━━━以下微グロ注意━━━━━━
施設内の通路から見えたのは薬を投与され胸を開かれ心拍を計られている犬、脳が一部露出した状態で何かしらの器具を取り付けられ脳波を計られている猫、その他多数のマウスやうさぎ、鳥などが居た。
自分には何も出来ない、割り切らねばならぬ事と分かってはいるものの動物好きの自分としては苦い複雑な心境にならざるを得なかった。
人間にしろペットにしろ医療はもちろん嗜好品や化粧品などでも動物実験は行われている事が多い。望む望まないに関わらず自分も少なくない恩恵を受けているのは間違いないだろう。ただ、目の前の部屋を仕切るガラスが数多の屍を積み上げた見えない境界線のように感じられ言葉に出来ない壁を感じ言い様のない不安が湧き上がってしまう。
「わかってはいるんだけどなぁ。」
思わず出た言葉に案内人が苦笑いしているのが見え少し気まずくなった私は外を見ると大きなカゴに複数の犬やウサギ、猫、猿などの入ったカゴが大きな建物から運び出されているのが目に入った。
案内人に聞くとあれらの動物たちは実験が終わった処分待ちの動物たちとの事だった。
どのように処分するのか聞いてみたがそこは曖昧で処分場なる場所で適切な処理を行うのだそうだ。場合によっては生体解剖でそれぞれのパーツごとに腑分けし、神経や脳などの反応や異常がないかを調べるのだそうだ。
━━━━━━以上微グロ終了━━━━━━
それからも色んな施設を回ってみたが施設内の状況や処分の方法はそれぞれの施設で少しづつ異なっていたが、どれも大量の血液を入手するには不可能に近そうだった。
恐らく全ての施設を合わせればかなりの数の動物の確保が可能なのだが、動物一体の血液量というのはそんなに多いわけではない為、今回の連続事件全ての血液量や質を考えると大量の血液をわざわざ保存する必要がありそうだった。しかも、それらには適切な処理を施した上でのきちんとした低温保存が必要になる。つまり、それなりの知識と技術を持つ人間と施設が必要な事が想像できる。
だが、事件で使用された血液量を補い、且つ目立たないように動き回れるかというと疑問が残る。
これだけ特殊な事例が起こった場合、単独による犯行の時にはもちろん複数による犯行にしても、よほど上手く立ち回ってもどこかしら無理が生じるはずなのだ。上手く立ち回ったら立ち回ったで都合が良すぎるという違和感が生じるほどに。。。
と、施設を周りながら取ったメモを読み返しながら思考に耽り、次は各施設に共通している部分を調査する事にした。
各施設で共通している事、それは動物達への供養だ。
年に一度、冥福と感謝の祈りの供養を行うのだそうだ。命を扱う施設ならおそらく日本中で行われているであろう何のことはない普通の行事である。大抵は各施設に宮司を呼び関係者一同で祭事を行う。
ところがこの辺一帯では違う。
依頼する神社にはそういう動物に対する慰霊の日が決まっている為、全ての関係者がその神社に向かい一同揃っての祈祷を執り行ってもらうのだそうだ。
自分は知らなかったがその界隈では有名な神社らしく、基本は地元企業、それもその地域に居住している者のみの参加で、例え長年その企業に勤めていてもその地域から外れた場所からの通勤者は除外される。ただ、人数に余裕がある時のみ地域居住者ではなくともその地元企業の支社もしくは関係者の参加が許されるらしい。
土着信仰が進んだ結果だろうか?謎が多そうな神社に向かう事で少しでも糸口が見つかればと多少急ぎ足でその神社に話を聞くためそのまま神社へと向かう。
到着するまでに先程の施設見学による複雑な気持ちを払拭したいが、散歩中の犬や気まぐれに歩く猫、その辺を啄んでいる雀などが目に入るとどうしても思い出されてしまいなかなか切り替えることができなかった。
(せめて何かもっと別の出来事でもあれば気を紛らわせられるのに。すぐに意識が戻ると思われた目撃者の連絡もない。仕方がない、とにかく件の神社へ向かうとするか)
そう考えていたときだった。
新たな捜査方針に則って改めて過去の目撃者から話を聞くために動いていた者から連絡が入った。
全ての目撃者との連絡が取れないのだという。
住まいや勤め先はもちろんの事家族や友人全てに事情を聞くも全てが不明。事件目撃後引きこもり状態だった者も忽然と行方をくらませていた為、家族から捜索願が出されていると言う。行方不明になった正確な日付は不明だが、確実なのは“城”の一件があってからなのは一致してしていると言う事だった。
一体何が起こっていると言うのか。