3〜5.5(警察官その1)
「はぁ・・・」
クシャクシャになった紙を見ながら思わず溜息をつく。事件の核心に迫る情報の糸口には違いないが、人と狼の特徴だと??
片手で頭を無造作に書き天井を見ながら再度溜息をつく。
「狼男でもいるってか?だが・・・」
そして、なかなかこの事を受け入れられずに思わず独り言が漏れた。
(・・・だが、ここ最近の出来事はあまりにも現実離れし過ぎている。刑事としては失格かも知れんが、もしかしたらもしかするかも知れない)
オカルト的な物は捜査において犯人を絞り込み証拠を見つけ出す為などに使う物であり、決してオカルト的存在を捜し出し究明する事ではない。
そんなのはモ○ダー捜査官に任せればいい。
頭の中でそう考えながらも私はどうしても人間のした事とは思えなくなっていた。
(共通事項も事件件数も多いにも関わらず不可解な点が多過ぎる。先週は4件もの事件があったにも関わらず、空飛ぶ城の一件があってから何も起きていない。)
そう、事件の頻度が高くなった為かなりの緊急性を持ってパトロール数をギリギリまで増やし、なおかつ自身も夜は事件が起こりそうな場所を歩くようにしていた。それらが抑止力になったとは思えないが、(実際先週迄はなんの成果もなかった)あの一件以来事件は起きていない。
証拠紛失や体毛の件を知らない連中には今回の事件はあの城を呼び出す為の儀式で、新たな事件が起きないのはそれを達成したからじゃないかなんて話が出ているくらいだ。
二つの件を知っている私でもこの件はもう起きず、お蔵入りになる可能性が高いと考えてもいたのだが、そう考えると勘というか心が妙にざわつくため、多分まだこの一件は続くだろうと考え直さずにはいられなかった。
(ここは一つモ◯ダーになってみるか)
何度目になるか分からない溜息をもう一度つきそう決意する。
しかし、この路線で捜査する事は流石に大っぴらには出来ない。極秘で手に入れた体毛の件も情報提供してくれた人物の憔悴ぶりから表沙汰にするのは躊躇われる。
表向き用にサンプルの結果で出た多数の動物の元を調べるという名目で動物実験を行う施設、動物保護施設、繁殖施設などを洗いながら密かに調査する方向で行こうと方針を固め独自で動く事にした。
幸い仕事柄こういったオカルト方面での情報を持っていそうな人物もいる。少し渋るかも知れないが手帳と別件でつかんでいる事をチラつかせれば問題ないだろう。
ただ、何かが足りない。
何が足りないのかとふと周りを見渡すと警察官募集のポスターが目に入る。毎年作っているが今回のポスターは少し趣向を凝らしているらしくなかなかの評判らしかった。
そして気づく。
そうだアレだ。
あれが足りないんだ。
「ス◯リー捜査官。。。。」
そう呟いた時だった。
空飛ぶ城の一件以来なりを潜めたと思われた連続血溜まり事件と思しき現場が見つかったと連絡が入ったのだ。
急ぎ現場に向かい既にかけつけていた他の捜査官から話を聞く。
1人だが目撃者もいる。
しかも事件が目撃されたのは事件中〜直後と思われ、目撃者は気を失っているものの、目撃者が倒れる前後を目撃したと言う、、少しややこしいが目撃者の目撃者もいるという事だった。
事件目撃者は救急車で搬送され、その目撃者の目撃者も同行者として一緒に病院へ向かっているらしい。
現場の様子は今まで起こっている連続血溜まり事件と同様と認定しても良さそうだった。事件目撃者の話を聞かないことにはなんとも言えないが、特殊ライトで血溜まりの縁にあの奇妙な紋様と文字が浮かぶ事が確認されている。
まだ全周を見終えたわけじゃないがこちらも恐らく同一のものだろうという見解だ。
そこまで聞いて後の現場は他の捜査官たちに任せて私は目撃者が搬送されたという病院へ向かう事にした。
病院に着き医師から話を聞くと事件目撃者の方はまだ意識が戻っていないらしい。
所持品から事件目撃者の名前は柊 蓮人ということがわかった。
柊を目撃した人物の話ではいきなり叫んで走り出し、路地を覗きこんだと思ったらいきなり倒れて路地から血溜まりが広がってきたという事だった。
倒れた時にガラスが割れる音がしたため最初は柊が怪我をしたのかと思い救護しようと側に寄り血溜まりを確認。それら以外は何も見えず何が起こったのかよくわからないもののとにかく警察と救急に連絡をという判断で通報という流れになったらしい。ガラスの割れる音がしたという事から何かしらの怪我をしているかと思われたが検査の結果確認どこにも異常なしという事だった。
ガラスの音の元になったと思われる所持品もなかったそうだ。
「仕方がない、意識が戻るのを待つか。」
期待していた情報は現時点では入手出来なかった為多少苛立ちつつ柊の意識が戻り次第連絡を入れて貰うよう病院側に伝えその場を後にした。