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サンショウウオを見て叫んだサー・マスタング。
それと共に俺の肩に置いた手に力がこもる。
ミシミシッ…!!!
「……っ!!」
サンショウウオを見たサー・マスタングが興奮したせいで俺の肩を掴んでいた手に力が増しヤバめな音がなっている。声を出して注意したいがあまりの痛さに声が出ない。
これはダメなやつや…
…あ、もう少しで肩が弾けて意識が飛びそ…ぅ。
「ガウガウっ!!」
「おっ!?うぉぉっ!??」
俺の異変を感じた黒虎が、咥えていたことほぎを放り投げサー・マスタングに吠え突撃をかます。吠えられ突撃をかまされたサー・マスタングは驚き俺から手を離し後ろに尻餅をつく。
た、助かった。。。。
「黒虎、ありがとう。もう少しでどうにかなる所だった」
礼を言いつつ黒虎の頭と顎を撫でる。
人型だったら完全アウトだけど、今は大きな猫みたいなもんだしいいよね?
派手に放り投げられたことほぎは何故か屋根の煙突に頭から突っ込むようにはまっていた。
「器用な奴だな」
「ガ…ガウ…」
俺の呟きを拾い目線を追った黒虎が申し訳なさげに視線を下げる。
「いいんだ、ある意味自業自得だ。それに多分あいつわざと煙突に入ってるぞ?」
「ガウッ!?」
今までのことほぎの行動を見てて何となくそう感じた俺は黒虎にそう告げ気にしなくていいと伝える。黒虎は驚いていたようだが、思い当たる節があるのかすぐに納得した様子を見せた。
「あぁ!あぁっ!!こんな所で…!こんな所であなた様にお会いできるとは思ってもいませんでした!!」
そんな俺達の横ではこちらの様子などお構いなしにサー・マスタングが一瞬のうちにサンショウウオの尻側にまわり平伏している。他のメンバーもそんなサー・マスタングに続くようにわらわらと集まり、まるで崇めるように平伏している。
というか、崇めている。
サンショウウオみたいなやつはその状況に慣れているのか、それとも気にしていないだけなのか、なんの感情も感じられない表情と小さな瞳でジッと…何故か俺を見続けている。
サンショウウオに知り合いはいないし…たまたまだろうと思いつつ右へ一歩移動する。
すると、サンショウウオの視線は顔ごと俺を追う。
左へヒョイ
左へジー
右へヒョイ
右へジー
「やっぱり俺を見ているな」
「ガウ」
肯定する様に黒虎も肯く。
「うーん、話が出来るとは思えないし、サー・マスタングに聞くのが一番いいのかも知れないけど、あの中に入るのはなぁ…」
「ガウー…」
そうやって暫く傍観していたが、筋肉達の様子は落ち着く事なくむしろ熱が上がっていく様子で『感☆涙』と言う感じで次々とマッスルポーズを決め始めている。
相変わらずサンショウウオはこちらを見ているし、漢臭さは増してるしなのでどうにかこの流れを変える為に俺はある事を思いつく。
「なぁ、黒虎。家の屋根に登れるか?」
「ガウ!」
俺の質問に首肯した黒虎に俺はある事をお願いする。
その願いに一瞬動揺した様子は見せた物の力強く頷き、あっという間に屋根に登ってくれた。
「猫の跳躍力って凄いな!あ、今は虎?なのか」
どっちにしろ凄いと思いながら黒虎を見守る。
屋根に登った黒虎はまだ煙突にささっていることほぎの尻を咥え思いっきり放り投げる。
「あーーれーーー!」
少し間抜けな声を出しつつことほぎは綺麗な弧を描き地面に体操選手のような綺麗な着地をドヤ顔で決める。
(2本足で立てるんだ…)
そんな事を思った瞬間…
「くっさっっっ!?しかもむっちゃジメジメするですー!??」
とことほぎが騒ぎ出す。
着地した場所はサンショウウオのすぐ近く。
最前列で崇めているサー・マスタングとサンショウウオのちょうど間くらいだ。
ちなみに筋肉達はそんなことほぎには一切気付いていない。
大袈裟な位にヨタヨタと4本足で歩きながらサンショウウオの隣を素通りし俺の横に来たことほぎに対し、俺はもう一度サンショウウオが何者なのかを聞く。
「アレはサラマンダーですー。蒸し暑い所を好み、周囲に存在する物に潤いを与えるそこそこ稀なキャラですー。」
「サラマンダー・・・、ゲームとかだと火を扱う奴だけどそれとは違うんだな。なんで俺を見てるのか分かるか?」
「さー?聞いてみてはいかがですかー?主人なら話せると思いますよー?」
マジか。